第17話:大阪湾の激浪と、戦艦の誇りを継ぐ男
緊急要請を受けて佐々木がヘリで急行する中、大阪湾の海上はすでに血と硝煙の匂いに包まれた凄惨な戦場と化していた。
黒く泡立つ海面から次々と姿を現す、不気味な影――『水陸両用・半魚人型侵略者』。
ヌルりと光る鱗に覆われた身体は体長四メートルを超え、鋭い爪と魚雷すら打ち消す水圧弾を放つ生体器官を備えている。
その数は、確認されているだけでも百頭以上。大阪湾の港湾部を埋め尽くさんばかりの大群だ。
「撃てぇッ! 港へ上がらせるな! 一頭たりとも大阪の街に踏み込ませるな!!」
激しい艦砲射撃の重低音が、海面に怒号となって響き渡る。
展開した海上自衛隊の護衛艦群。
その最前線で指揮を執っていたのは、最新鋭護衛艦の艦長――大和猛一等海佐だった。
大和猛。
かつて太平洋戦争の末期、人類史上最大の戦艦として出撃し、散っていった『戦艦大和』。
その最後の航海で舵を握っていた伝説の操舵手の曾孫にあたる男だ。
「艦長! 三時方向から二頭接近! 船底を狙ってきます!」
「取り舵一杯! 主砲、手動照準――放てッ!」
ドガアアアンッ!!
重厚な砲撃が海面を打ち抜き、襲いかかった半魚人の一頭を水飛沫ごと吹き飛ばす。
「相手は人間ではない。容赦は無用だ!」
猛の指揮に迷いはない。
それどころか、彼は艦長室に閉じこもるような男ではなかった。
甲板へと飛び出した猛は、自ら肩に対戦車ロケットランチャーを担ぎ直すと、艦体にへばりつこうと這い上がってきた半魚人の面前に仁王立ちした。
「ギシャアアアアッ!」
「我が艦の甲板を汚すな、化け物が!!」
ズドォンッ!!
至近距離から打ち込まれたロケット弾が、半魚人の胸部を直接吹き飛ばし、巨大な巨体が水柱を立てて海へと落ちていく。
吹き荒れる海風に制帽を叩かれながら、猛はギロリと荒れ狂う海を睨みつけた。
――あの大戦の時、大和は時代の波と圧倒的な物量の前に傷つき、海へと沈んだ。
曾祖父たちが命を懸けて守ろうとした誇りと、戦艦の威信。
(ひいおじいちゃん……見守っていてくれ)
猛は手に残るロケットランチャーの熱を感じながら、心の中で固く誓う。
(あの時は途中で潰えたが……今度は違う。俺が、この現代の海で、必ず『ヤマト』の魂と強さを世界に見せてやる!!)
しかし、咆哮を上げる猛の眼前で、海の底からさらに禍々しい超巨大な影が急速浮上してきていた――。




