第15話:砂漠の暴走と、ロケラン軍団の一斉砲火
「サササササササササッ!!!!」
無数のアリ型怪物を撃ち抜き、周囲の数が減ってきたその時――地響きとともに、ギザの砂丘が巨大な山のように大きく盛り上がった。
砂煙を吹き散らして現れたのは、これまでのアリ型の十倍以上の巨体を持つ『女王アリ』だった。
紫色の禍々しい甲殻と、鉄すら一瞬で溶かしそうな、濃縮酸の泡を口元から噴き出している。
「ひいっ……! あんな化け物、どうやって倒せばいいんだ!?」
「退避! 潰されるぞ!!」
エイジスエジプト支部の現地兵たちがパニックを起こし、脱兎のごとく逃げ惑う。
(あれに真っ向から突撃しても、酸の飛沫でこっちが溶かされるな……。なら、誘導して一気につぶすか)
俺は倒れた現地兵が乗り捨てていた、軍用のオフロードバイクに飛び乗った。
アクセルを限界まで吹かし、エンジン音を砂漠に響かせる。
ブロロロロオオオオンッ!!
「おい、でかいの! こっちだ!」
俺が女王アリの眼前にバイクで躍り出ると、巨体が怒りに震え、地響きを立てながら俺の後ろを猛追し始めた。
(よし、食いついたな……!)
砂地をバイクで爆走しながら、俺は片手で無線機を耳に当てた。
「佐々木だ。特殊部隊、聞こえるか? 『ロケラン軍団』を配置につかせろ。俺が今から巨大な標的を連れて行く!」
『えっ!? ロケラン軍団……!? 了解しました! すぐに砂丘の後方に砲列を展開させます!』
俺はバイクを巧みに操り、襲いかかる巨体を引き連れて、砂丘の陰へと滑り込んだ。
そこには、俺の指示で待機していたエイジス特殊部隊の精鋭、三〇名がズラリと勢揃いしていた。
全員が肩に肩にロケットランチャー(RPG)を担ぎ、照準を合わせている。
俺はバイクを急ターンさせ、女王アリの真正面から横へすり抜けると、手で合図を送った。
「撃て!!」
「「「「打ち込めーーーッ!!!!」」」」
ズドドドドドドドドドドドドドンッ!!!!!!
三十発以上のロケット弾が、一斉に尾を引いて飛翔した。
追撃に夢中で無防備だった女王アリの胸部と顔面に、途方もない爆炎が叩きつけられる。
ドガアアアアアンッ! チュドオオンッ!
「ギサアアアアッ!?」
さすがの巨体も、特殊部隊の一斉射撃には耐えかね、全身から紫色の体液を吹き出させながら大きくひるんだ。
だが――これだけの砲撃を受けても、まだ生きている。
頭部の強固な装甲が、寸前のところで核を守り切っていたのだ。
(やっぱり頭の装甲だけはバカ硬いな……なら、装甲の内側から叩き割る)
俺はバイクのアクセルを全開にし、ひるんでいる女王アリに向かって急加速した。
背中に背負っていた、近接戦用の連発式ショットガンを引き抜く。
『―――――』
ドクン!!
『クロノ・ヴィジョン』発動。
苦悶にのたうち回り、大口を開けて咆哮しようとする女王アリの顔面が、スローモーションの世界で完全に固定される。
俺はバイクで怪物の顔面すれすれまで肉薄すると、立ち上がり、開いた大顎の奥――目の前にショットガンの銃口をピタリと突きつけた。
(1周目では、お前らにアフリカ全土が喰い尽くされたんだ)
冷たい瞳で、引き金に指をかける。
「じゃあな」
――ズドンッ!!
『―――――』
時間を、通常スピードへと戻す。
チュドガアアアアンッ!!!!
至近距離から叩き込まれたスラッグ弾の衝撃が、女王アリの口内から内部破壊を引き起こした。
強固だった頭部装甲が内側から吹き飛び、巨大な頭が一瞬にして木っ端微塵に粉々へと砕け散った。
ドシーン……!!
首を失った女王アリの巨体が、沈黙してギザの砂漠へ倒れ伏す。
周囲を取り囲んでいた無数のアリ型怪物たちも、女王を失ったことでパニックを起こし、クモの子を散らすように地下へと逃げ去っていった。
……しーんと静まり返る砂漠。
ロケランを構えたまま固まっていた特殊部隊の精鋭たちが、呆然と息を呑む。
「な……バイクに乗りながら……至近距離で顔面を吹き飛ばした……!?」
「化け物だ……あの男、マジで神か何かなのか……!?」
拍手と歓声が上がる中、俺はバイクのエンジンを切り、砂の上へ降り立った。
激しい運動と砂漠の熱気で、全身汗だくだ。
額の汗を手の甲で拭いながら、俺は青空を見上げてぽつりと呟いた。
「はぁ……喉乾いたな。冷えたビール飲みたい……」




