第14話:エジプト上空の死神と、エイジス(A.G.I.S.)発足
大洗で超巨大地下掘削種を撃破してから、一週間。
人類の存亡を賭けた統合部隊――
『A.G.I.S.(エイジス)』
——Anti-Global Invasion Squad(対地球規模侵略特務部隊)
が正式に設立された。
国境や政治的思惑を超え、世界各国の最精鋭が集結した人類反撃の絶対的な盾。
その『特別顧問』という、実質的な最高戦力として担ぎ上げられた俺は、休む暇もなく地球の裏側へ飛ばされていた。
――エジプト、ギザの大砂漠。
灼熱の太陽が照りつける砂漠の上空は、地獄絵図と化していた。
羽ばたくだけで突風を起こす、体長三メートルを超える巨鳥――『猛禽型侵略者』の大群が空を埋め尽くしている。
そして地上では、砂を巻き上げて蠢く巨大な『アリ型侵略者』の群れに対し、エイジスの地上部隊が装甲車や戦車を投入して熾烈な防衛戦を繰り広げていた。
『こちらエイジス地上部隊! 敵航空戦力からの急降下攻撃により損害多数! 救援はまだか!?』
『上空の猛禽型を排除しない限り、地上戦力の展開は不可能です!』
激しい無線が飛び交う中、俺の乗る大型輸送ヘリは砂漠の上空へと到達していた。
「佐々木顧問、着陸ポイントはどこに設定しますか!?」
操縦士が、機内の騒音に負けじと大声で叫んでくる。
「いや、ヘリからでいい」
「え? しかし……!?」
操縦士が目を見開いて振り向いた。
時速二百キロ以上で飛び回り、不規則に旋回するヘリの上から、同じく超スピードで空中を乱舞する巨大なタカの群れを射撃するなど、物理的に不可能だ。
一瞬でも隙を見せれば、タカの爪でヘリごと叩き落とされるのが目に見えている。
――まあ、普通の人間ならな。
「ヘリに重機関銃の固定砲台を設置しろ。それと、敵の群れに近づきすぎないよう、この高度を維持して円を描くように旋回してくれ」
俺はヘリの開口部に据え付けられた重機関銃を握り直す。
装填されているのは、エイジスが俺専用に緊急開発した『一発でもかすれば周囲ごと爆散する』特殊榴弾を込めたベルトリンクだ。
「いいか、絶対にヘリを落とさせないように操縦だけ集中してくれ」
『―――――』
ドクン!!
心拍が跳ね上がり、『クロノ・ヴィジョン』が起動する。
一瞬にして、世界から音が消え去った。
砂嵐も、ヘリのローター音も、すべてが超スローモーションへと遅延していく。
上空を暴れ回っていた猛禽型の怪物たちが、まるで標本のようにピタリと空中に静止した。
(よし……全部止まって見えるな)
俺は重機関銃の照準を合わせ、静止した空へ向けて引き金を引いた。
ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!
スローモーションの世界で、連射された特殊榴弾が綺麗な一筋の線を描いて飛んでいく。
一頭目の首筋、二頭目の翼の基部、三頭目の胴体――俺は重機関銃をミリ単位でスライドさせ、静止している怪物の群れへ次々と着弾点を刻み込んでいく。
『―――――』
時間を、通常速度へ戻す。
チュチュチュチュチュドガアアアアアアアアアンッ!!!!!!
空が一瞬にして連続爆発の炎で埋め尽くされた。
何十頭という巨大なタカ型が一斉に爆破され、肉片と炎の雨となって砂漠へ降り注ぐ。
空を覆っていた絶望的な群れは、わずか数分で一頭残らず打ち落とされ、エジプトの青空が広がった。
「な……なんだ……今のは……!? ひとりで空の群れを全滅させたのか!?」
開いた口が塞がらない操縦士をよそに、俺はヘリのハッチからラペリングロープを投げ落とした。
「サンキュー、助かったよ」
するするとロープを滑り降り、俺はエジプトの熱い砂地へと足を着ける。
周囲を見渡せば、空からの脅威が消えたものの、地上にはまだ無数のアリ型怪物が、こちらを威嚇するように大顎を鳴らしながら群がっていた。
砂漠の熱気にうんざりしながら、俺は肩をすくめて愛用のライフルを構えた。
「さて……さっさとやって、冷えたビールでも飲むか」




