第11話:大洗沖の激闘と、解体される巨大悪魔
ズズズズズズズズ……ッ!!
海水が爆ぜ、海面を割りながら這い上がってきた『超巨大地下掘削種』の全貌。
それは、ビル数棟分にも匹敵する悪夢のような巨体だった。
ドオンッ!!
空気を置き去りにし、超巨大地下掘削種が牙を剥く。
現実世界においては、音速すら超える凄まじい突進。
数百メートル離れていたはずの巨体が、わずか数秒で俺の目の前――海岸線へと肉薄してきていた。
「な……ッ!?」
「速すぎる……! あの巨体で、あの速度だと!?」
後方に展開していた自衛官も、ヘリから援護していた特殊部隊の隊員たちも、その理不尽な暴虐の速度に息を呑み、金縛りに遭ったように凝視していた。
だが。
『―――――』
ドクン!!
脳が限界突破の領域へ加速し、世界から全ての音が消え去る。
(ふぅ……)
『クロノ・ヴィジョン』が発動した俺の視界の中では、その凄まじい突進速度すら――まるで散歩でもしているかのように、のっしのっしと歩いてくるスローモーションに過ぎなかった。
(やっぱり、まだ弱点の核は隠したままか……。なら、攻撃の瞬間だな)
俺を丸呑みにし、一噛みで噛みちぎろうと、巨体がその禍々しい大口をゆっくりと広げていく。
無数の鋭い牙。その奥深く、喉元の装甲が引き裂かれ、赤紫色の発光器官がわずかに覗いた。
(今だ)
スローの世界で、俺は静かにスナイパーライフルを構える。
狙いすました一発。引き金を、迷いなく指で押し込んだ。
――ズドンッ!!
飲み込もうと迫る大口の真ん中、喉奥の『核』へ、大口径の徹甲弾が正確無比に突き刺さる。
『―――――』
カチ、と世界が通常スピードへと弾け飛んだ。
ガアアアアアアアアンッ!!!!
「「「!?!?!?!?」」」
一瞬で飲み込まれた――誰もがそう確信した次の瞬間。
超巨大地下掘削種が激しい痛みに身をよじらせ、巨体を激しく震わせながら、大洗の海へと大きく後退していった。
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「な……何だ……あいつは……!?」
特殊部隊に配属されて十年。
数々の危険な修羅場を潜り抜けてきた隊長は、上空のヘリからその光景を見下ろし、声もなく戦慄していた。
空を覆うような巨大な化け物の出現にも当然驚愕したが、それ以上に――あの『佐々木』とかいうスーツ姿の男の存在に、底知れぬ恐怖と衝撃を覚えていたのだ。
音速で迫る巨体に対し、一歩も引かず、飲み込まれる寸前の一瞬で逆に化け物を叩き返した。
人間技ではない。
「撃て! 顧問を援護しろ! 全員、火力を集中させろ!!」
我に返り、叫ぶように指示を出す。
ヘリからの重機関銃やロケット砲が、後退する怪物へと降り注いだ。
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激しい爆炎。……だが、俺は冷静にその光景を見つめていた。
(さすがに硬いな……)
特殊部隊の猛烈な援護射撃をもってしても、怪物の外殻には擦り傷一つついていない。
弱点以外の部位には、やはり現代兵器の通常攻撃は通用しないのだ。
「全隊、攻撃を中止してください!」
俺は無線に向かって静かに告げた。
「弾薬の無駄です。俺が合図するまで、攻撃の手を止めてください」
俺はスナイパーライフルを再び構え直し、静かに波打ち際に立った。
攻撃を止めさせ、あえて奴の次の攻撃を待つ。
傷を負った超巨大地下掘削種が、怒りに狂ったように発光器官を明滅させ、巨大な一万トンの腕(前脚)を振り上げた。
大気を引き裂き、俺を押し潰そうと振り下ろされる悪夢の一撃。
『―――――』
ドクン!!
再び訪れるスローモーションの世界。
降り注ぐ巨大な腕。
その凄まじい威力の代償として、関節部分の装甲が大きく開き――内部の肉芽と繋ぎ目が剥き出しになるのが見えた。
(見えた……!)
装甲の隙間、ミリ単位の繋ぎ目。
俺は迷いなく引き金を弾いた。
――ズドンッ!!
『―――――』
カチッ。
ドガアアアアンッ!!!!
悲鳴のような大爆音とともに、超巨大地下掘削種の太い腕が根元からへし折れ、途方もない水柱を上げて海へと吹き飛んだ。
「ギシャアアアアアアアッ!?」
片腕を失い、海上で激しくのたうち回る巨大な悪魔。
俺は冷めた瞳でライフルの薬莢を排出し、次弾を装填した。
(あと一発で……完結させてやる)




