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3 月読峠再訪


「あの自動販売機の隙間で、僕も古地図を拾ったんだよ」

 うっすらと白くなった歩道を歩きながら、僕は大吾に説明する。

 前回来た時のことは、来る途中の車内で話していた。


「烏天狗の里ねえ。ちょっと信じられないよな。この町の人は昔からの信仰とかで、すんなり理解しやすいのかな」

 大吾は隣で肩に積もった雪を払った。この大吾の背中。中学生の頃は僕とそんなに変わらなかったのに、この二年くらいで僕よりずっと広くたくましくなっている。

 少し、いやたくさん悔しい。


 時刻は午前10時過ぎだ。前回来た時と同じようにして来たから、それは当然なのだけど、空は曇っていて雪までちらついている。

 月読峠駅前は、路上の白い雪のせいで、まったく別の場所のようだった。

 烏天狗の像も、頭に雪をかぶっていた。


 駅前ロータリーの車止めに目をやると、クリーム色の軽自動車のドアが開いて、七巳が手を振っているのが見えた。

 僕は大吾の手を引いて走り出す。 

 濡れた路面で滑って転びそうになった時、大吾が手を引っ張り上げてくれた。

 転ばずにすんだ。


「ボディガードのお仕事、その一完了」

 大吾が僕の頭をぽんと叩いた。



「その人が華原大吾くんね。もしかして由紀の彼氏かな?」

 車に乗り込んだ僕らに、七巳が早速言葉をかけてきた。

 彼氏だなんて、七巳は僕のことわかっているくせに、わざと意地悪に言うのだ。

 いや、もしかしてヤキモチかな?


「大吾は近所にいる幼馴染! こっちは七巳で、あっちは池水ちすいさん。ニュースで見ただろ、古書店の店主兼作家の人だよ」

 彼氏かなという問いは無視して、僕が紹介した。


 池水さんも、よろしくと一言。

「じゃあ、辻文神社に向かうからな」

 そう言って彼は車を出した。


 車窓の風景が駅前のメインストリートから、田舎の高原の町の風景にゆっくり変わっていく。たった二週間しか過ぎていないのに、遠くの山はすでに雪景色、深まりゆく冬を感じた。


「それで、楽々ささうらくんはまだ?」

 七巳に会えた喜びを無理やり抑えて、話を失踪した楽々浦に変えた。


「うん。まだ居場所がわかんないの。警察も捜索してくれているんだけどね」

 助手席の七巳が車のルームミラーを動かして、僕と鏡越しに向き合えるようにした。楽々浦のことを心配しながらも、七巳の口元に目が行ってしまう。

 あの可愛い唇にキスすることをつい考えてしまう。


「辻文神社に行くって、七巳の曽祖父の神主さんと話をするの?」

 僕が聞くと、池水さんは、いやそれは少し待ってくれと言った。


「まずは荷物を置いてからということで。昼飯食べたら、ちょっと試したいことがあるんだ」

 ゆっくり左折しながら、池水さんはそう言った。


「でも、楽々浦くんの失踪が天狗の里と関係あるって、どうして分かるんですか」

 僕はまず気になったことを聞いてみた。池水さんが答える。


「実は、あれからも楽々浦くんと二人でドローンを使って天狗の里を調査していたんだよ」

「それ、あたし知らなかった。天狗の里はそっとしておこうって言ってなかったですか?」

 池水さんの言葉に、七巳が不満の声を上げる。

 どうやら楽々浦くんと池水さんだけでやっていたようだ。


「ドローンで調査と言うと、それで何かわかったんですか?」

 ここで大吾が割って入った。 


「その動画、私も見せてもらってないよね」

 と七巳。


「ああ、後で見せるから。ほらもう着くぞ」

 池水さんがそう言うので前を向くと、由緒ある佇まいの古い石の鳥居が現れた。



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