13 男になれるのか?
全員で案を練り上げて、楽々浦が烏天狗の長老にそれを伝えた。
来年の7月15日を中心に前後5日間で、烏天狗の夜神楽を催して村人たちを招くというものだ。
子供たちが多く集まるように出店なんかも用意して。
それでも村に残って災害にあう人は出るだろう。
しかし、単なる警告でも疑ったり抜け駆けしたりする人は出るのだ。
むしろ夜神楽のほうが大勢が助かるという予想になったのだった。
それにこれなら万一予想が外れても、信用失墜することもない。
「なるほど。お主らの案、相承った。面白い考えだ。前向きに検討しよう」
長老もうなずいている。烏天狗の表情は読めないが、声に納得の響きがあった。
終わった。僕らの役目はここで終わりだ。この先の災厄まで僕らはここに居ることはない。
肩の荷が下りた気がした。
「ところで、お主らにお礼をしないといけないな」
長老が僕らを見回して言った。
「お主、なにか欲しいものか、願いはないか」
長老は大吾を指して聞いた。
大吾がすっと立ち上がった。
「お、俺ですか。ね、願いといっても」
大吾は僕をちらっと見た。目が合うとすぐに彼は目をそらす。
「わかった。お主には一手指南しよう」
長老が右手を上げると、その方の補佐役の天狗が立ち上がった。
その若い天狗が構える。武道の構えだ。
「試合をしてみよ」
長老はそう言った。
指南試合ということか。
大吾が一礼して向かい合う。
気合を込めた大吾の突きと蹴りが天狗を襲うが、ひらりと躱され、逆に回転しながらの低い蹴りを返された。
大吾が転がる。
そして立ち上がり、二人は一礼して別れた。
「すごい。今の技。たしかに受け取った。この技使えば、多分負けなしだぞ」
大吾の声には隠しきれない興奮があった。必殺技を一つ教えてもらったのだ。
次は七巳だった。彼女も同じようにして一手授かった。
まずいなあ。七巳がさらに強くなってしまったじゃないか。
でも、僕も一手もらえばまたお相子だ。
そして、楽々浦と池水さんには、「学業の足しに使ってくれ」と何やら渡された。
「お、これ、金貨じゃないか。結構重いな。この重さなら100万にはなるぞ」
「良かったですね。またドローン買えるじゃないですか」
二人が喜んでいる。
僕には何かな?
「お主は、男になりたいのだろう。その願いを叶えてやることも出来るぞ」
長老は思いもかけないことを言ってきた。
僕が男になれる? おちんちんが生えるのか?
それは物心ついてからずっと願ってきたことだった。
男になれば、七巳とも結婚できるし、二人の子供も出来るのだ。
皆が僕に注目している。
男になった僕を想像してみた。この身体とお別れして男になった僕。
新しい自分になることと、今の自分にサヨナラすること。
そんなの比べられるわけがない。一瞬だけど、深く考えてみた。
そして僕はきめた。
「僕にも一手ご指南ください」と。
男になりたいけどなれない、そういう悩みを持つのが僕なのだと思った。
そんな悩みのない自分に、僕はなりたくない。
「だって、七巳に勝てないと、男になっても女役やらされるだけだし」
七巳を見て僕は言った。
七巳も笑った。もしかして僕が男のほうが七巳には良かったのかと思ったけど、その笑顔は僕の答えが間違いではないのだと言っているようだった。




