14 終わりは始まり
結論も出たことだし、僕らは元の世界に帰ることになった。
長老たちに別れの挨拶をして、家を出る。
村の烏天狗たちが、僕らを見てお辞儀したり手を振ったりしてくれた。
「あ、ところで、月読峠に撒かれた古地図。あれはやっぱり天狗たちが撒いていたの?」
楽々浦に七巳が聞いた。
「そうだよ。本命は由紀が拾った水墨画で、それ以外は撒き餌だったわけ」
楽々浦が答える。
「撒き餌って何?」
僕が聞くと、今度は池水さんが答えてくれた。
「つまり、烏天狗はあの異界の穴を通ってか、誰かが関心を寄せてくれることを考えたんだよ。でも、あの水墨画一枚じゃ誰もあの場所を探索する者はいないだろ。だから実際に意味のある古地図を撒いて、興味をもたせる作戦に出たってわけだ」
「それに、まんまと引っかかったんですよね」
と楽々浦。皆が笑う。
「でも、男になった由紀ノ介も見てみたかったな」
七巳が僕の肩を小突いた。
「嫌だよ。それじゃあ一生七巳に勝てないじゃないか」
僕が言うと、大吾が、
「由紀ノ介は由紀ノ介だ」と意味不明なこと言って僕の頭をクシャッとした。
「大吾くんもそのほうが良かったよね」
楽々浦も意味不明なことを言う。
大吾が不思議な顔をして、何か言おうとしたけど、
「駄目よ!楽々浦に向かって、俺のことわかるのか、というセリフは禁句だから」
さっと七巳が大吾の口を閉ざした。
大吾だけ意味がわからず、きょとんとしたけど、僕らは笑いながら湖の岸辺まで来た。
「ああ。冒険もこれで終わりか。なんだか淋しいな」
僕がこぼすと、池水さんが、
「終わりは始まり。君らは若いんだから、これからもたくさんの冒険が待ってるさ」と、随分大人ぶった言い方をする。
「池水さんだって、まだ32歳じゃないですか。僕らにとっては先輩だけど、あの長老から見たらまだまだ青二才ってところでしょ」
楽々浦が比較対象論で切り返した。
「でも、五人乗れるかな?」
ゴムボートを前にして七巳が言った。
ぎりぎり乗れそうな気もしたけど、左手から渡し船がやってきた。
烏天狗がその船で渡してくれるとのことだった。
木造の小舟に皆で乗り込む。
遠くなった天狗の里を振り向くと、村の人々が大きく手を振ってくれていた。
横に座った七巳の手を握る。
彼女もしっかり僕の手を握り返してくれた。
消えたあいつを追ったら思わぬ冒険になった話 2 おわり
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