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赤い実の果実を分かち合う

─リルネット…僕の可愛くて可愛そうな女の子─


…メイビス公爵家の4番目の子供。

産まれてすぐに両親によって、3年間地下に閉じ込められていた女の子。


人間の醜悪さ愚かさ…全てを知った上で人々に優しく接する。

そして人々の望むものを差し出す慈悲深い少女。

女神のようなリルネット。


何に対しても熱心で真面目に取り組む。

常にどのような物事に対しても研究心がある。

学んだことはしっかり復習するのだ…

何事に対してもだ……。


ネイクは耳に心地よさを感じつつも、心の奥底では少し憂いを感じていた……。

リルネットの可愛らしい頭をポンポンと撫で

「リルネットは勉強熱心だね。」と低く甘美な声で、耳元に囁いた。


ネイクの心の中では、様々な感情が渦巻いていたがのだが、ニコリとリルネットに微笑み温室内を引き続きエスコートする。

温室内には様々な果実、野菜、ハーブ、薬草などが植えられていた。透明で綺麗な水が流れている水路もある。

美しく育つ植物の間をネイクのエスコートで通っていく。

目の前には、赤い実がたわわになっている6mほどの大きさの木があった。

「…これは、ザクロ…ですね。」

初めて見たザクロは緑の葉っぱと赤い実のコントラストが綺麗でどことなく神秘的であった。


ネイクは頷くと、一つ実をもぎ取り実を半分に分ける。

中身は赤い宝石のような粒がびっしりと詰まっていた。

「フフッこのザクロもリルネットに食べさせてあげたかったんだよ。」

ネイクがどこからか持ってきたスプーンで真っ赤なザクロの実をすくい、リルネットの艶のある愛らしい口にゆっくりと運んだ。

ザクロが口の中に入ってくると、口の中いっぱいに甘酸っぱい味が広がった。

キラキラとした顔でネイクを見る。

ネイクがうんうん…と嬉しそうにまた一口また一口とリルネットの口に運ぶ。

「美味しいかい?。」

「とても、美味しいです。ネイク様ありがとう。」

リルネットは微笑みながら、今度はリルネットがネイクにザクロを食べさせた。

ネイクは嬉しそうに綺麗に整った口を開けてザクロを食べる。

…ザクロを食べるネイクからは、何ともいえない色香が漂っていた。


────ブルブルブルッ────


こっっつ怖いんだってー!!

ルイジアの背筋には、悪寒が走っていた。

見るものによっては、婚約者達の仲睦まじくほほえましい状況にみえるであろう。

しかし、ルイジアの脳裏には、ある国の神話が浮かび、そこはかとなく恐怖を感じるのであった……。

数ある果物から、ザクロを選択するという執着的な蛇のようなネイクが怖かった。

ルイジアからは、ただの執着の塊の大きな蛇が清らかな女神に巻き付いているという姿にしか、見えなかったのだ。

「なんと恐ろしい。……そして…哀れなお嬢様…」

恐らく全てを承知の上で、ネイクの行動を嫌がることなく微笑みながら、全てを受け入れてるのであろう。

リルネットがなんとも美しく、不憫に感じるのであった。

しかし、ネイクを止められる者は誰もいない。

無理矢理に止めようとしたら……。

きっとこの国ごとき簡単に滅びてしまうでたろう。

だから、誰もネイクを止めないのだ…。

ルイジアもそれは心得ている。あまりにも行きすぎた事は、ルイジアは命懸けで制止しているのである。


ルイジアの胸元に入っていたくまゴーレムのルネは、ルイジアをじっと見つめスリスリと寄り添ってくれた。

ポケットからぴょんと飛び出して、ネイクの頭の上に飛び移った。


あ……っ、今邪魔してしまったら国が滅びて……


ネイクの頭にルネが飛び移り、甘い雰囲気がぶち壊しになったかと思われた。

…が……意外にもネイクは嬉しそうだった。

「(リルネットの産み出した創造物だからね。

そして僕たち2人の子供みたいな物だ。父親の僕になつくのは無理のない事なのだよ。)」

 勝ち誇ったようにネイクがルイジアを見る。

「(あばぱばば)」←ルイジアの声にならない声である。

美しい顔立ちの美しい銀色の髪の毛の上に、かわいいライラック色のくまゴーレムが乗っているのを見てリルネットはクスリと笑った。

「(うん。ルネは僕たちの子だ。)」

リルネットは、ルネにもザクロ食べさせる。ぴょーんぴょんと跳ね、ルイジアのところに戻って、いつの間にかリルネットから受け取ったザクロをルネが、ルイジアに食べさせる。

ルイジアの心のゾワゾワが少し落ち着いた。

そして初めて食べたザクロは、とてもおいしかったのであった。

食べ終えた後、温室内を再び歩く。

見たこともない果物、野菜、ハーブが目につく。

いくつものくまゴーレムが、植物の世話をせわしなくしていた。

     ……ゾワゾワゾワゾワ……

ルイジアの足元に何か感触を感じた為ふと足元を見た。

すると、そこにはチューリップに似た花があった、と思ったら葉っぱ?の部分で、走り去るようにササーッと向こうの方に動いていった。

「な、何ですかぁ?あれは?ー。」

ネイクはこの騒々しい赤獅子めという風にチラリとルイジアを一瞥し、深いタメ息をついた。

「あれは、根なし草さ。根がないのだから走っていくに決まっているではないか。」

(……訳がわからん。あんなの初めて見ましたって…)

「すごいです。根なし草は限られた地域にしか生息せず、また自分達の気に入ったところに移動する。……余程この温室の環境が根なし草にとって良いのですね。」

リルネットが流暢に説明した後、ネイクに尊敬の眼差しを向けた。

ネイクは嬉しそうに笑い、その甘美な唇をリルネットの頬に近づけキスをした。

リルネットはいつものように微笑んだのであった。



お読み頂きありがとうございます。

入学前編を数話程度終えましたら、次はいよいよ学園 入学式編へと物語は進んでいきます。

個性的なキャラが続々と登場する予定です。

どうぞ宜しくお願い致します。


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