その6
Kは生ビールをもう一杯注文しました。
――沈黙。
お互い、何も話しません。
私は、こう思っていました。
――向こうが誘ってきたんだから、私が気を使って場を盛り上げる必要はない。
別に、話したいこともないし。
やがて、生ビールのお代わりが運ばれてきました。
Kはそれを、ぐびぐびと飲み始めます。
私はタバコを吸い、ウーロンハイをちびちびと啜っていました。
――コイツ、何で俺を誘ったんだ……?
十五分ほど、変な感じの沈黙が続いた頃、Kの注文したチャーハンとトンカツが運ばれてきました。
Kは、モリモリと一心不乱に食べ始めます。
私は、居酒屋で、子供以外にこんな食いっぷりをする人間を見たことがありません。
私は、珍しい動物でも見るかのようにKを見つめていました。
Kは、黙々と無言で食べ続け、十分ほどでチャーハンとトンカツを平らげると、生ビールを一口、喉に流し込みました。
そして、
「ふぅ〜、俺、腹減ってるとダメなんだよね〜」
喋った…
けど……“ダメ”って、いったい何が?
まぁよう分からんが、だったら先に飯食って来いよ。
やっぱり…コイツは違う。
うん、間違いない、コイツは絶対に違う。
そう思った瞬間、喉元まで込み上げていたあの感覚は確信に変わりました。
――付き合っちゃいけない人間だ。




