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某年1月2日。晴。  作者: あみれん


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30/34

その30

「Tちゃん、ウーロンハイ、いいかな?」


奥さんが冷蔵庫から缶のウーロンハイを取り出し、Kに手渡します。

Kは缶のプルタブを開け、一口飲みました。


「二人から連絡があったのは、分かってたよ、もちろん。でもスルーしたんだよ」


私と奥さんは何も言いません。


「オレさ、パニック症候群やったじゃん。あれ、怖いんだよ。突然、心臓がバクバクしだしてさ、立ってられなくなるんだよ。それで仕事はもう無理だな、って思ってさ」

「で、ずっと知り合いの家に居候してたんだけどさ、さすがに悪いなって思って、東京の叔母さんの家に転がり込んだんだよ」


「うん」


「その叔母さん、オレが子供の頃からオレのこと可愛がってくれててさ、コッチの事情も知ってたから」


Kはたこ焼きを一つほおばります。

同じタイミングで、私は餃子、奥さんはポテトサラダをつまみます。


しばし間が開きます。


Kは缶のウーロンハイをグビッと飲みます。

同じタイミングで、私は缶ビール、奥さんは缶のレモンサワーをグビッと飲みます。


「その叔母さん、年金生活者でさ、一人暮らしであんまり余裕のある生活じゃなかったと思うけど、オレのこと預かってくれたんだよ」


「お前は働いてなかったんだろ?」


「ああ、だから余計に余裕が無くなったと思うよ。だからオレさ、一日中、叔母さんの家でじっとしてたよ。たまに買い物に行ってやったりしてさ。叔母さん、体の具合が悪そうだったから、まぁ、いろいろ手伝いとかしてさ」


「じゃあ、外に飲みにも行けなかったんじゃないの?」


「そんなの無理無理。でもさ、叔母さん、ビールとか缶チューハイとかたまに買ってオレに飲ませてくれてさ。あ、タバコは毎日買って吸わせてくれてたよ」


「だからコッチからの連絡、スルーしてたのか?」


「うん、まぁ。とにかく、誰にも会いたくなくなってさ」


「で、その叔母さんの家に転がり込んでから、誰とも会ってなかったの?」


「オフクロ、弟達とはたまに会ってたよ。それ以外は誰とも会ってなかった」


私は缶ビールを取りに冷蔵庫に向かいます。


「でさ、とにかく動かないからブクブク太っちゃってさ。服とかズボンとか入らなくなっちゃってよ」


Kはヒャヒャヒャと笑います。


私と奥さんは笑いませんでした。


救急車のサイレンの音が響いてきました。

サイレンの音はだんだん大きくなってきましたが、やがて小さくなっていきました。


「1月2日に急患かよ、あの人たちも大変だよな」


そう言いながらKはたこ焼きを一つほおばります。


1月2日に、死んだと思ったヤツを20年振りに見たコッチも大変なんだけどーー


私はそう思っていました。

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