↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
某年1月2日。晴。  作者: あみれん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/35

その29

あの日、Kが「パニック症候群を患っている」と私に告白した日を境に、Kからの連絡は途絶えました。

私から何度かKに電話やメールで連絡を取ろうとしましたが、Kからの返信はありませんでした。

でも、私はこう思っていました。


またK劇場の新たな幕が上がったに違いない。

そして、いつものように、突然ひょっこり連絡をしてくるだろう。


しかし、Kがひょっこり現れたのは、あの日から20年後でした。

いつからだったでしょうか……私は、"Kはもうこの世にいないのだ"、と思うことにしていたのです。

ですので、よく晴れた1月2日という日に、突然のKの登場は、文字通り"青天の霹靂"のような事件だったのです。


現在ーー

某年1月2日

午後八時


私、私の奥さん、そしてKはダイニングのテーブルを囲んで座っています。

焼きそば、唐揚げ、たこ焼き、お好み焼き...という、まるで祭りの屋台で買ってきたようなラインナップが、Kの目の前に並んでいます。

そして、冷食の炒飯とカルボナーラも。

私の奥さんは、Kの偏食を覚えていたようです。


「お、Tちゃん、オレの好物を覚えてくれてたんだ」


Kはそう言うと、ヒャヒャヒャ、と笑います。


この笑い方……変わってないな。


奥さんが缶ビールを持って言います。


「さ、20年ぶりの再会、乾杯しましょ」


Kは缶ビールを一口飲むと、炒飯の皿を引き寄せ、無言で食べ始めました。

私と奥さんは、黙ってKの食べっぷりを眺めています。


「冷食の炒飯だよ、おいしい?」


奥さんがニヤニヤしながら尋ねると、Kは無言でサムアップしました。

Kは炒飯を平らげると缶ビールを一口飲み、今度はカルボナーラの皿を引き寄せ、再び無言で食べ始めました。

Kのあの精密機械のような見事なフォークさばきは健在でした。

私はその規則的なKの動きを見ているうちに、あることに気づきました。


「灰皿、いるか?」


Kは無言で手のひらを左右に振りました。


タバコ、やめたんだ……

まぁ、生活保護受給者だもんな、タバコも随分と値上がったようだし……


Kはカルボナーラを平らげると缶ビールを一口飲み、ふぅ~、と大きく息を吐きます。

昔なら、ここでショートピースに火をつけているところです。


「何回も連絡取ろうとしたんだよ。一体どこにいたの?」


奥さんがKの炒飯とカルボナーラの皿を片付けながら言います。


「え?……まぁ……、何から話そうかね……」


この後、私にとっての"Kの20年間の空白"の溝が埋まっていきます。

私が「死んだ」と思うことにしたKは、この20年間、K劇場の幕を閉じていませんでした。


そして私と奥さんは、その20年間の物語を聞くことになるのですーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。