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某年1月2日。晴。  作者: あみれん


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28/35

その28

Kは、ホームにうずくまって、右の手のひらで左胸を押さえていました。

呼吸が荒くなっています。

電車から降りた人が数人、Kと私を避けながら、上り階段に向かって通り過ぎて行きました。


「どうした……大丈夫か?……」


「ちょっと……待っててくれ」


私は辺りを見回します。

線路を挟んだ向かい側の上り線ホームに駅員が見えます。


「駅員、呼ぶか?」


「いや、いい……」


土曜日の夜の10時。

私達がいる下り線ホームには、私達以外には誰もいません。

ホーム沿いの外壁のところどころに、広告看板が貼られています。

私達の目の前の広告看板の無い、剥き出しで薄汚れたクリーム色の外壁の表面を、ホーム上に一定間隔で設置されたスポットライトの一つがオレンジ色にライトアップしていました。

音のない、静かな駅でした。


初めて降りる駅だな、ココ......


私は、ホームを覆う天井のシーリングライトに照らされて、規則的に大きく波打っているKの肩と背中を見下ろしながら、そんな事を考えていました。


「な、タクシーで帰ろうぜ」


「いいって......もうちょっと待っててくれ......」


駅全体に不快に残響する構内アナウンスの数分後に、次の電車が下り線ホームに入ってきました。


Kは大きく息を吐いて立ち上がりました。


「これに乗ろうぜ」


私は出かかった「大丈夫なのか?」の言葉を飲み込みました。

無用な心配はKには似合わない、そう自分に言い聞かせます。

大丈夫だからKは立ち上がったのです。


その夜、Kは私の家に来て、いつも通りに酒を飲み、タバコを吸い、そして泊まり、翌朝に帰って行きました。

KはいつものKに見えました。


「ほんじゃ」


Kはいつも通りにそう言って、玄関から出て行きました。

Kの硬い靴音が遠ざかっていきます。


私は、Kが昨夜言った言葉を頭の中で反芻していました。


パニック症候群ーー

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