その27
Kが初めて私の部屋を訪ねてきて一緒に飲んで以来、Kと私は、毎週のように土曜の夜に私の部屋で飲むようになりました。
私の部屋は4階建ての4階、つまり最上階で、角部屋なので、多少大きな音を出しても問題にはなりませんでした。
14インチのテレビ画面に音楽ライブの映像を流しながら、他愛もない話をダラダラとしていました。
Kは居候先に帰りたくないのか、よく私の部屋に泊まり、翌朝帰ることも頻繁になりました。
幸い、私の妻はKのことをいつも歓迎していたので、家庭内でも問題にはなりませんでした。
「ツマミは自分の分だけ買って来いよ」
私はKにそう言っていました。
私のつまみは妻が用意してくれます。
今日も床に敷かれた新聞紙の上に、スーパーで買った惣菜、焼酎の紙パック、ウーロン茶のペットボトル、アイスバッグ、グラス、そしてKの前に灰皿が無造作に置かれています。
Kの買ってくるツマミは、相変わらず屋台の夜店から買い込んだような面々が並んでいます。
Kは職探しもしていて、以前勤めていた会社の事務作業と違い、持ち前の体力を活かして引っ越し業者や解体業者の仕事に就いたのですが、長続きしなかったようです。
「オレさ、痛感したよ、若けぇ連中にはもうかなわないって」
私たちは30代半ばの年齢になっていました。
「とにかくスピードが違うんだよ。ついていけねぇ」
Kは天井を仰いで、ショートピースの煙を噴き上げます。
「解体業者の現場で仕事してた時……暑っつい日でさ、オレさ、ぶっ倒れたんだよ、仕事中に」
「もう、ダメだと思ったよ」
私はただ黙って聞いていました。
でも私は、Kの口から初めて漏れ出た言葉を考えていました。
「ダメだ」―――何が......ダメなんだ?
それから数週間後―――
私とKは某アーティストのライブを見た帰りの電車に乗っていました。
「ちょっと...途中で降りていいか...?」
「いいよ、どうした?」
「いや、ちょっと...」
私とKは途中駅で電車を降りました。
降りるなりKは、その場にうずくまりました―――




