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某年1月2日。晴。  作者: あみれん


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その21

Kは、またショートピースに火を付けました。

私はホッピーを飲みながら考えていました。


この男の常識ラインってどこにあるんだ?

いや、この男にそもそもそんなモノがあるのか?

コイツのギリギリ感って…ハンパない。


「そんでさ、その子もオレのことが好きみたいでさ、なんか、オレとその子のことが社内で噂になっちまってんだよ」


Kはショートピースをふかします。


「しかし、なんで放っておいてくれないんかねぇ。 誰にも迷惑かけてねぇのによ、ったく、面倒くせぇ連中だよ」


私は、Kのあまりにもシンプルで、どストレートな話しっぷりに、体が硬直し始めるのを感じていました。

これまで私の中に積み重なってきたKという人物像のせいでしょうか。

「恐らく、Kは正しいことを言っているのだ」と、思わされてしまうような力が、Kにはあったのです。


「そう思わねぇか?」


ホッピーのジョッキの持ち手を握る私の指が一瞬だけケイレンします。


そんな話、こっちに振るなよ~。

なんて言っていいか分かんないよ。

っていうか、口が上手く動かないよ。


「あの子さ、旦那と上手くいってないって言ってさ、オレ、そん時に、あの子の頭を撫でたんだよ」


もういいって!

もうやめてくれ!


「そしたらあの子、かわい〜く、ニコォ〜って笑ってさ」


も、もう帰りたい~っ!


Kはウーロンハイをグビッと飲むと、ぷはぁ~、と大きく息を吐きます。

私は、Kに感づかれないように体を身構えます。


……次はいったい……何を言い出すんだ……?

あんまりドキドキさせるんじゃないっつーの。

こんな話を聞かされると知っていたら、ここには来ていないぞ。

これじゃ、Sの話はいったい……いや、そうだ、この男は「今日、会えねぇか?」としか言っていない。

Sの話をする、なんて一言も言っていない。

自分が勝手にそう思い込んだだけだ。

ツッコミどころが……ない……

なんだ、この圧倒的な……

だめだ、かなわない……


Kはショートピースを持つ右手で頬杖をついて、うつろな瞳を壁に貼られたお品書きに向けていました。

恐らくKには、もうお品書きは見えていません。

こんな風に、物思いにふけるKを見たのは初めてです。

そして…


「いい子なんだよな~、カナちゃん」


その瞬間、私は反射的に裏返った声を上げていました。


「ますたぁ、ウーロンハイください!」

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