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某年1月2日。晴。  作者: あみれん


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19/24

その19

東西に走る路線の改札を出ると、すぐに南北へ真っ直ぐ続く商店街の通りに出ます。

陽はすっかり暮れています。


近年、この沿線の駅前は再開発ラッシュで、私の最寄り駅の駅前も様変わりしてしまいました。

ですが、この駅の駅前商店街は昔のままです。

土曜の夕暮れ時のせいか、多くの人が通りを歩いていました。

通りに沿ってひしめき合うように並ぶ個人商店や、赤提灯の灯り、ネオンが活気を演出しています。


私は人波を縫って、早歩きでいつもの焼き鳥屋に向かいます。

焼き鳥屋の引き戸を開けます。 ほとんど満席でした。

Kはカウンター席に座っていました。

この店では、Kはいつもカウンター席に座ります。

目の前が厨房なので、注文しやすい、というのが理由です。


Kは焼き鳥とホッピーです。

この店にはチャーハンもスパゲッティ・カルボナーラもありません。


私はKの隣に座るとすぐに、厨房にいるマスターに、ホッピー白セットと揚げ出し豆腐を注文します。


「大分慣れたんじゃないのぉ? Hちゃん」


この店は人気店ですが、マスターと奥さん、たまに娘さんだけで切り盛りしていて、皆いつも忙しそうにしています。

なので、待ちの姿勢でいると、いつまで経っても注文できないのです。


Kはショートピースに火を付けます。

私は壁に貼られた"お品書き"を見ています。

沈黙が続きます。


奥さんが、ホッピー白セットを持ってきました。

私は焼酎の入ったジョッキにホッピーを注ぎます。

Kはジョッキを少し持ち上げ「ういっす」と言います。

K式の乾杯です。


私はホッピーを、グビッと飲みます。

何とも形容し難い、でも病みつきになる味です。

Kは吸っていたショートピースを灰皿で揉み消すと、大きく溜息をつきました。


「アイツさ、どうもメンタルらしい」


私は思いました。


やっぱり――


「『お前のとこにも行ったのか』って言ってたよね。アレは…」


「中高時代の同級生とか、あちこち訪ねているらしい。オレのとこにも何度か来たんだ。突然に」


「でも何でメンタルだと?」


「オレさ、アイツの家に行ったんだよ。そしたらアイツいなくてさ。奥さんが出てきて、話してくれたんだよ。通院もして、仕事も休んでいるってな」


やっぱり、とは思いましたが、実は実感が湧いていませんでした。

あの陽気なSがメンタルって....


「奥さんが言っていたんだけど、アイツ、たまに変なこと言い出すらしい」


「変なこと....?」


「なんか…新しいビジネス始めるから、いっしょにやろう、とか。だから絶対に真に受けるな、って、奥さんが言ってたよ」


…そんなに…深刻なのか…


カタンッ、と、揚げ出し豆腐が私の前に置かれました。

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