その17
現在――
気がつけば、Kの顔に深い影が降りていました。
私は部屋の照明をつけます。
「そうだ、子供たちに写メしようかな、お前の。アイツら驚くぜ。なにせ二十年ぶりだもんな」
Kは、ヒャヒャヒャ、と笑います。
「二人とも元気なんだろ?」
「うん」
私がスマホをKに向けると、Kは黙って笑顔でピースサインを作りました。
Kは写真に撮られながら、話し出します。
「写真と言えばさ、S、アイツはいっつもカメラを持ち歩いて、よく写真撮ってたよな。オレらがスタジオに入っている時でさえ、演奏の合間にカシャカシャやってたっけな」
「うん……」
Kはパイプ椅子に座り直し、腕を組んで、すっかり日の暮れた窓の外に目を向け、呟くように言葉を漏らします。
「Sかぁ……」
私の口からも、言葉がこぼれます。
「あのさ」
Kは私の顔を見ます。
「あの、信じないかも知れないけど、Sが来たんだよ」
「あぁ? いつの話?」
「二年くらい前」
Kは顔を一瞬歪めると、ヒャヒャヒャ、と笑い出しました。
「おん前っ、何言ってんだよ、二年前って!」
Kは咽せ始め、お茶を飲みます。
「だから言ったじゃん、信じないかも知れないけどって」
「あぁ? 何それ、どういうこと?」
私もお茶を飲みます。
「Sがさぁ、オレが寝ている時に、上から覆い被さって来てさ、耳元でオレの名前を何度も囁くんだよ」
Kの顔は、もう笑っていませんでした。
そして、私の顔をじっと見つめて言いました。
「ははぁ〜、そりゃぁ、お前に会いに来たんだよ」
あの時――
そう、あの時バンド再開を決めたあたりから、私達の物語は少しずつ、そして更に予期せぬ方向に動いて行くのです。




