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某年1月2日。晴。  作者: あみれん


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16/23

その16

Kが戻ってきました。

Kは椅子に座ろうとして、私の方を向いて静止しました。


「ん?Hちゃん、ナニよ〜、浮かない顔してぇ。何かあったの?」


そう言うと椅子に座り、フォークを包む紙ナプキンを外して、黙々とスパゲッティ・カルボナーラを食べ始めました。


私はKをじっと見ています。

Sはニヤニヤしながら私を見ています。


コイツ、自分で話す気ないな…

まぁ確かに音信不通になった件を話すとは言っていないからな。


そして私は気付きます。

Kは全身からある種のパワーのようなモノを放ちながら、無言でこう言っているようでした。


余計なことを聞くんじゃねぇよ。

別にお前に迷惑かけてねぇし。


私にしても、まるで"絵に描いたような"あの美人局の一件については、あまりにも矛盾なく整然と進行していたので、私の中では話が完結していました。

なので、特に確認したり、聞きたいことも思い浮かびません。

せいぜい「いくら払ったんだ?」くらいでしたが、それこそ余計な話だと思い、もうこの件には触れるのを止めました。


それに、もう終わったことです。


私はSにバンド再開の話を振ります。


「あのさ、ストラトを買おうと思っているんだよね。フェンダー・ジャパンだけど。今持ってるストラトは音がイマイチだから」


「へぇ~」


「だから、BBAの《Superstition》、もう一回演らない? 前回はテレキャスで失敗してるから」


「ストラトねぇ…レスポールじゃないの?」


Sは不満そうです。


「レスポールかぁ…、ギブソン、高いんだよなぁ…」

「グレコでもいいじゃん」

「う〜ん…」


Sの気持ちも分かります。

ジェフ・ベックのあの”太い音”が欲しいのです。

でも、私はレスポールを買うことに気乗りしていませんでした。


すると、


「いいじゃん、ストラトで演ってみれば」


カルボナーラを食べ終えたKでした。

Kは紙ナプキンで口を拭いながら続けます。


「取り敢えずストラトで演ってみようや、何も完コピする必要もないし」


Kもバンド再開の話に加わり、大体の曲目を決めてこの日はお開きになりました。


帰り道。


あんな衝撃的な話を聞いたにもかかわらず、私の中で燻り続けていた、Kに対する"あのイヤ〜な感じ"は湧き上がってきませんでした。

美人局に引っかかるKに、コレまで感じてこなかった"弱さ"とか"スキ"のようなモノを感じていたからでしょうか。


私は、Kがトイレに立つ際に見せた手刀を真似してみます。


「あっ…アイツ…」


私は立ち止まります。


あの手刀…ひょっとしてアレはKからSへの"キュー振り"だったのかも…

だとしたら、今日は全て、Kが考えたプロット通りに進行したことになります。


私は、フっと息を吐き、星の見えない夜空を仰ぎます。

何故か微笑んでしまいます。


しかし、この時の私はまだ知りません。

コレが"K劇場"の序章であることを。

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