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コイ  作者: 高泉 恭
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ーーーどうして心臓がうるさいほど高鳴っているのか。


どうして顔が焼けるほど熱いのか。


どうして口角が上がってしまいそうになっているのか。




どうしてどうして、僕はこんなにも告白を素直に受け入れていて、嬉しがっているのか?

好きだという告白に――ましてや恋人にしたいだなんて――


たしかに、僕は彼にずっと、強く憧れていた。美しく在る彼を、何度うらやましく思ったことか。


だけどそれを恋心だと自覚することは無かった。

恋だと気づくことは無かったーー今の今まで。

困惑し逡巡する僕に彼が問いかける。



「では、質問を変えましょう。利幸君は、僕と接吻…したいですか?」



東雲君の唇を思わず見てしまう。薄くて、きれいな色をしている。


したい。


考えるよりも前に、そう感じていた。

欲情しているのを感じ取ったのか、東雲君の唇がかすかにつり上がった。さすが、聡い。


「顔、赤い。そういう顔、もっとみせてくださいよ…ふふ」


顎を掴まれ、じっと見つめられる。

されるのかと思って身構えたけれど、しばらくしても東雲君は唇を近づけない。


無理矢理することはしない…のか。

この感情が恋なのか。東雲君に惚れてしまっているのか。

それはわからないけど、今わかるのは、ただ東雲君を好きだと思う気持ちーー接吻したいと思う気持ち。

それだけは、揺るぎなく偽りなく、間違いなかった。



軽くうなずいて、まぶたを閉じた。


さらに腰に手をかけられ、包み込まれるようにして抱きしめられる。

そして。いつもの彼からでは考えられないような、優しく温い接吻。



彼のたしかな熱に、疑問がゆっくりと融けて、満たされるようだった。



鯉の跳ねる音も、鳥の鳴き声も、遥か遠く、次第に耳に入らなくなった。

東雲君が目の前にいる。


ただそれだけが、現実だった。


その晩は彼の熱を感じ指でたどるように、お互いの熱を肌に焼き付けるように、身体を重ねた。

何年何十年経とうとも、この熱を忘れはしない。



今までの何よりもはるかに特別な、はるかに大切な、夏の晩。

いつも通り過ぎる皮肉な物言いも少し乱暴な振る舞いも、いとおしくさえ思えた。







この人があと三ヶ月でいなくなってしまうなど、考えもしたくないーーーーーー






東雲君のそばの蚊取り線香が静かに少しずつ縮んでいく夢を見た。



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