第五話 出会い
東京都、八王子市。
そこはモンスターの中でも強力で狂暴な化物が生息している危険地帯。
バーサーカー・ウイルスの濃度が高く、とても人間が住める環境ではない。
そんな場所にやってきた蒼は、一筋の汗を流す。
「これは……」
表情を険しくする彼女の水色の瞳に映るのは、いくつものモンスターの死体だった。
潰された頭に、大きく切り裂かれたような斬撃の跡。
そしてなにかに喰われたような噛み跡。
ここで行われたのは戦いではない。
蹂躙であり、食事だ。
「どのモンスターも私がギリギリ倒せるやつらばかり……間違いない」
ガスマスクに覆われた口で蒼は舌打ちをする。
「これは……《竜》ね。他の痕跡もないか調べないと」
大型トラックを廃ビルの中に隠し、いくつもの武装を装備した蒼は街の中を探索した。
紫色の霧が蔓延する廃墟の中を、彼女は歩き続ける。
そしていくつもの痕跡を見つけた。
大きな打撃の跡。
刀で斬られたような一筋の斬撃の跡。
独特な形をした足跡。
そして地面に落ちていた白い鱗。
それらをキューブ・デバイスで写真を撮っていた蒼は、目を細める。
「そろそろ帰らないと……これ以上は危険ね」
蒼が帰ろうとした。
その時、
「うぅ……」
少女の呻き声が聞こえた。
声を聞いた蒼は目を見開く。
「まさか……ここに人がいるの?」
蒼は警戒しながら、声が聞こえた方向に向かって歩く。
両手に重火器を装備し、一歩一歩とゆっくり進む。
そして声の発生源に辿り着いた蒼は、自分の目を疑う。
「は……?」
氷の女王と呼ばれていた少女は、呆然とした。
彼女は信じられなかった。
信じられるはずがなかったのだ。
「これは……現実?」
蒼の目に映っていたのは、地面に倒れた裸の少女だった。
温かみのある綺麗な肌。
腰まで伸びた黄金の髪。
神が己の手で作ったような整った顔。
美しく、神々しい女の子。
そんな彼女を見て、蒼は自然と呟く。
「『不思議の国のアリス』」
それは小さい頃、蒼が好きだった絵本。
とある少女アリスが、白い兎を追っていたら不思議の国に迷い込んだという物語。
まさにそれだった。
今、蒼の目の前にいる女の子は、本来別の世界の住人。
そんな住人がなんらかの理由でこの世界に迷い込んだ。
そう思うぐらい蒼は、金色の少女を美しいと思ってしまった。
「この子は……いったい」
なぜ少女がガスマスクしていないのか?
なぜ少女が裸なのか?
なぜ少女が強力なモンスターたちが住み付いている危険な場所にいるのか?
そして謎の少女が何者なのか?
蒼はわからなかった。




