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第四十一話 思い出
アリスが攫われ、一人になってしまった蒼。
彼女は家のソファーに座り、ただ頭を抱えることしかできなかった。
なにもできなかった無力感と絶望が蒼を襲う。
「アリス……」
大切な人の名を呼んだ蒼は思い出す。
料理を作るアリスを。
「アリス……」
胸に痛みが走るのを感じながら、名を呼ぶ蒼は思い出す。
一緒に風呂に入った時、自分の胸を触ってくるアリスを。
「アリス……」
悔しそうに目元を歪める蒼は、思い出す。
太陽の如く明るく元気な笑顔を浮かべたアリスを。
「アリス…アリス…アリス……」
蒼は大切な人の名前を何度も呼ぶ。
名前を呼ぶたびに、アリスとの思い出が溢れ出す。
とてつもない喪失感を感じながら、蒼は髪を搔きむしる。
「……一人でやっていけるようになったら、離れるつもりだった。早く手のかからない子になってほしいと思った」
それは蒼の偽りのない本当の気持ちだった。
「だけど……彼女と離れるとこんなに苦しいなんて」
蒼は右手で胸を押さえる。
アリスとの楽しい日々を思い出し、蒼は唇を噛む。
「私の……私だけの聖女を……」
蒼は誰よりも強く、冷たい心を持つようにしていた。
そんな彼女が数年ぶりに弱気な声を吐く。
「返して」




