第四十話 バイバイ
ボロボロになって倒れている蒼に拳銃を向ける白衣の男。
彼が引き金を引こうとしたその時、
「やめて!」
白衣の男と蒼の間にアリスが入り込んだ。
涙目の彼女は蒼を庇うように両腕を広げる。
「あなたたちに従う!だから蒼は殺さないで」
アリスは涙を流しながら、白衣の男を睨む。
「もし……蒼になにかしたら私は……絶対に許さない」
大切な人に傷を付けたらここにいる全員を倒す。
そんな怒りの声を口から出したアリス。
彼女の髪と瞳が浅く光る。
「……いいでしょう。そこにいる少女が生きていようがどうでもいいです」
拳銃を白衣の内側にしまった男は「行きましょう」と言い、振り返って歩き出す。
アリスはそんな彼の後を追いかける。
機械鎧を纏った兵士たちは、アリスが逃げないように囲む。
「ア…リ…ス……」
電撃のせいで痺れて動けないでいた蒼。
痙攣している彼女は、手を伸ばすことしかできなかった。
アリスは一度だけ足を止め、振り返る。
「蒼……今までありがとう」
苦しさを押し殺したような顔で涙を流す彼女は、無理矢理に笑顔を浮かべた。
「大好き」
その言葉を聞いた蒼は目を見開く。
行かないで。
そんな文字が頭に浮かび上がった時、蒼はなんとか立ち上がろうとする。
(動け!動け!私の身体!)
心の中で叫ぶが、蒼の身体は言うことを聞かない。
(あんな悲しい笑顔をアリスにさせるなんて……そんなのダメよ!許していいはずがないわ!)
蒼ができるのは、手を伸ばすことだけ。
「アリ…ス!」
なにもできない自分の無力感を蒼は恨む。
そんな彼女に、アリスは手を振る。
「バイバイ」
そしてアリスは白衣の男と兵士たちと共にその場から去っていった。
残っていたのは、蒼いだけ。
「クッソオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
蒼の無念に満ちた叫びが響き渡った。




