第三十九話 モンスター対策組織
「モンスター……対策組織。そう……あなたたちが」
冷徹な目で蒼は、白衣の男を睨む。
しかし男は親しみやすい笑顔で「落ち着いてください」と言う。
「なにも私たちはあなたと戦うつもりはありません」
「……ならなんであなたたちはここに来たのかしら?」
「そちらにいる『聖女』様を回収しに来たのです」
白衣の男は不気味な笑顔でアリスを見つめる。
まるで人ではなく、ずっと大好きだった玩具を見つけたような目。
アリスは後退り、蒼は眉間に皺を寄せる。
「この子はそんなことを望んでいないわ」
「『聖女』の意思は関係ありません。もうこの世界を救うには『聖女』の魔法に頼るしかないのです」
「どういう意味よ?」
白衣の男は顎に手を当てて、「ふむ」と頷く。
「いいでしょう。あなたは『聖女』を保護をしてくださった。特別に教えてあげましょう」
男は真剣な表情で口を動かす。
「この世界は……近いうちに滅びます」
その言葉を聞いて、蒼は息を呑む。
「なにを……言っているの?」
「バーサーカー・ウイルスの汚染は拡大。モンスターはさらに強くなり、増えてきています。そして……《竜》の数も少しずつではありますが、新しいのが生まれて増えていってます」
「!」
「あらゆる調査の結果、あと数年で人類は全滅します」
「嘘よ……そんな話、信じない。聞いたことがないわ」
「人々に混乱や絶望を与えないように、政府が隠しているのです。ですが……心配いりません。そのために我々は最高の兵器を作ったのですから」
白衣の男の言葉を聞いて、蒼はそこでようやく気付く。
彼らがなぜ聖女を生み出したのか。
無意識に蒼は怯えた表情を浮かべているアリスに目を向ける。
「さぁ……こちらに来なさい。あなたはこの世界を救う英雄になるのです」
白衣の男は手を伸ばす。
しかしアリスは彼の手を握らない。
ただ無言のまま、首を左右に振る。
「そうですか……残念です」
男は眼鏡を指で押し上げた後、パチンと指を鳴らす。
直後、動き出す兵士たち。
蒼はアリスを攫おうとする兵士たちを次々と倒していく。
拳銃と短剣で兵士たちが纏っている機械鎧の動力源を破壊し、殺さないで無力化する。
だが数の多さと見事な連携に、蒼は苦戦してしまう。
「アリス!今すぐ逃げーーー」
振り返った蒼が「逃げて!」と叫ぼうとした。
その時、兵士たちの銃からワイヤーで繋がった小さな機械が放たれ、蒼の鎧に張り付く。
次の瞬間、全身が激しく痺れる痛みが彼女を襲う。
「あああああああああああああああああ!!」
悲鳴を上げる蒼は地面に倒れ、痙攣してしまう。
「あなたのことは調べさせていただきましたよ、Aランクハンターの凍冷蒼さん」
眼鏡をクイッと指で押し上げた白衣の男は、蒼を見下ろす。
「あなたは強い……ですがここまでです」
男は白衣の内側から拳銃を取り出し、蒼の頭に銃口を向ける。
「さよなら」
彼の眼鏡が怪しく光る。




