第三十八話 突然
「ん……んん……」
「ふぁ~……」
窓から差し込む太陽の光に照らされた蒼とアリスは、ベットから起き上がる。
目を擦る蒼と大きく欠伸をするアリス。
二人の少女は見つめ合い、笑う。
「おはよう、聖女様」
「おはよう、氷の女王様。いや……氷の兎さんかな?」
「兎さんって……ちょっと恥ずかしいわね」
「ええ~かわいいじゃん」
アリスはプニプニと指で蒼の頬をつつく。
「もう……くすぐったいわよ」
「ごめんごめん。……ごはんにしようか」
「そうね」
ベットから降りた蒼とアリスはキッチンに移動。
蒼はコーヒーを準備し、アリスはフードプリンターで作った食材で料理を始めた。
コーヒーの香ばしい香りと肉を焼いた香りが二人の鼻を刺激する。
化学合成コーヒーが入ったコップと、フライパンで焼いた化学合成肉と緑のブロックが載った皿、フードプリンター製のパンを机の上に並べる二人の少女。
そして椅子に座った彼女達は手を合わせ、「いただきます」と言い、食事を始める。
「うん、美味しい」
「ええ、そうね」
パンをかじり、コーヒーを飲んだアリスは小さな声で呟く。
「……こういうのが幸せなんだろうね」
「え?」
「蒼と出会って、一緒にいて、料理を食べて……すごい大変な世界だけど……私……」
アリスはニッと歯を剥きだし、笑顔を浮かべた。
「すっごい幸せ」
太陽の如き明るい聖女の笑顔。
その笑顔を見て、蒼は呆然とする。
胸が温かくなるのを感じた彼女は頬を赤く染め、目を逸らす。
「私もよ」
恥ずかしそうに呟く蒼。
そんな彼女を見て、アリスは微笑む。
「そっか」
<><><><>
食事をし、歯磨きをし、武装を装備した蒼とアリスは話し合う。
「いい?今回、私達は《竜》の素材を売って、ハンター協会に『戦っていたら別の《竜》が現れて、殺し合いをして、片方が死んだ』って言うのよ」
「うん。そしてもう片方の《竜》はどこかに消えた……だよね?」
「ええ、そうよ。私やアリスが倒したというより、こっちのほうが現実味があるわ」
アリスの力を隠すために嘘の報告を考えた二人は扉を開けて、外に出る。
その直後、謎の集団が現れ、蒼とアリスを取り囲む。
一人一人が高性能な機械仕掛けの鎧を纏っており、大きな銃を装備していた。
「……誰よ。あなたたちは」
素早くアリスを背に庇い、蒼はコートの裏側から取り出した拳銃と短剣を構えた。
冷たい目で謎の集団たちを睨む彼女の耳に、男の声が聞こえる。
「すみません。我々は怪しい者ではありません」
兵士たちが道を開けると、白衣を着た男が現れる。
彼は眼鏡を指で押し上げ、口元を三日月に歪めていた。
「我々はこの世界を救う正義の組織」
「モンスター対策組織『希望』です」




