第三十五話 過去
「モンスター殲滅試作人型生物兵器『聖女』?」
耳を疑うような言葉を聞いた蒼は、思わず聞き返してしまう。
モンスター殲滅。
試作人型生物兵器。
『聖女』。
蒼は無意識にその三つの単語で、嫌な予想をしてしまう。
背中から汗を流している蒼に、アリスは説明を始める。
「私は孤児だったの。そんな私を政府が作ったモンスター対策組織が拾って、実験したの」
「モンスター対策組織……実験」
アリスは俯きながら右手で左腕の上腕を握り、目を閉じる。
「バーサーカー・ウイルスを適応させる実験。そうすることでモンスターを殲滅できる人間を……兵器を作ることができるのではと、研究者たちは考えたの」
「バーサーカー・ウイルスを!?そんな……嘘よ、だってバーサーカー・ウイルスを使った実験は禁止されているはず」
「本当だよ……その証拠があの力」
蒼は思い出す。光の剣や矢を生み出す魔法の力を。
「毎日毎日、実験の繰り返し……痛くて、苦しくて、たくさん泣いた」
辛そうに涙を流すアリスは身体を震わせた。
「私以外の人達は一人ずつ消えていって……千人以上いたのに、私一人だけになった」
アリスの話を聞いていた蒼は、徐々に眉間に皺を寄せる。
全てを凍らせるような冷たい怒りが彼女の中で沸き上がった。
「唯一生き残り、魔法が使えるようになった私は『聖女』というコードネームを付けられたの。そしていよいよ実戦をさせられようとした時に、私は隙をついて逃げてきたの。そこからは……蒼も知っての通りだよ……」
話を最後まで聞いていた蒼は脈が速くなるのを感じながら、表情をこわばらせる。
(最低ね……そのモンスター対策組織の連中は)
蒼は知っている。アリスが太陽の如く明るい女の子だと。
蒼は知っている。アリスが服やぬいぐるみが好きな可愛い女の子だと。
蒼は知っている。アリスが誰かのために努力できる優しい女の子だと。
蒼は知っている。アリスが悲しいことで涙を流す普通の女の子だと。
(彼女は兵器なんかじゃない。だって……その証拠に)
蒼の瞳には確かに映っていた。涙を流すアリスの姿が。




