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氷光恋愛  作者: グレンリアスター
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第三十四話 聖女

「はい、アリス。ミルクよ」

「ありがとう」


 蒼は化学合成ミルクが入ったコップをアリスに渡す。

 温かいミルクを一口飲んだアリスはホッと息を吐く。


「美味しい……」

「本当に……身体は大丈夫なの?」

「うん……大丈夫だよ」


 微笑みを浮かべるアリス。

 しかしコップを持っていた彼女の手がプルプルと震えていた。


(大丈夫……ではないみたいね)


 まだ身体のどこかが痛いのかという心配の感情。

 それが胸の奥から現れ、蒼は眉を八の字にする。

 ミルクをまた一口飲んだアリスは小さく苦笑した。


「なにも……聞かないんだね、蒼」

「え?」

「あの光の剣や矢……まるで魔法みたいだったでしょう?気になるよね」

「それは……」


 蒼は視線を逸らすことしかできなかった。

 アリスの言う通り、蒼は気になっていたから。

 なぜ《竜》を倒せるほどの力を持っているのか?

 あの魔法のような力はなんなのか?


(知りたい……だけど聞いてはいけないような気がする)


 蒼は口を開こうとして、すぐに口を閉じる。

 それから一時間ぐらい無言の時間が続く。

 なにも喋らない蒼の代わりに、アリスが喋り出す。


「実はね……私、記憶を全て思い出したの」

「え?」


 アリスの言葉を聞いて、蒼は一瞬だけ思考が停止する。

 記憶を取り戻した。

 それは喜ぶべきことなのだろう。

 しかし蒼は喜べなかった。

 なぜなら、アリスが辛そうに笑っていたから。


「聞いてくれる?私の……過去を?」


 わずかに震えたアリスの声。

 蒼には『どうしても聞いてほしい』と聞こえた気がした。


「ええ……聞かせて」


 蒼が頷くとアリスは「ありがとう」と呟き、ミルクが入ったコップをギュッと強く握る。


「私には名前がない。あるのはコードネーム。私は―――」



「モンスター殲滅試作人型生物兵器『聖女』」

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