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氷光恋愛  作者: グレンリアスター
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第二十九話 《竜》

 大型トラックを運転し、《竜》が最後に目撃されたとされる街に蒼とアリスはやってきた。

 建物はいくつも壊れており、血の臭いが充満している。

 ガスマスクをつけていた蒼とアリスはトラックから降りて、周りを見渡す。


「これは……」

「酷い……」


 地面には喰い散らかったモンスターの死体がいくつも転がっていた。

 どのモンスターも大きく、強そうなのがわかる。

 そんなモンスターたちが死んでいるのを見て、蒼は背中から嫌な汗が流れるのを感じた。


(どれも……強力なモンスターばかり。これをたった一体で……どれだけ化物なのよ)


 今まで聞いたことないぐらい大きな心臓の音が、蒼の胸から鳴り響く。

 氷に覆われた世界にいるような冷たさが。

 逃げ出したくなるぐらいの恐怖が。

 蒼を襲う。

 しかし彼女は逃げず、アリスと共に進んだ。


(最悪のことを考えて、できるだけの武装を準備したけど……これで大丈夫かしら?)


 蒼の身体にはいくつもの武装が装備されていた。

 両肩に搭載されたミサイルポッド。

 腰に差している二本の刀。

 背中から生えた機械仕掛けの四本の腕。

 そしてその腕が握り締める四つの重火器。

 今、蒼が装備できる最高武装だ。


「蒼……なにかあそこにいる」


 緊張した顔でアリスはある方向に指を指す。

 彼女の言う通り、遠く離れたところに白い影が動いていた。

 アリスと共にビルの影に隠れた蒼は、両手に装備している対物ライフルのスコープで白い影を目視する。

 そして蒼は息を止め、顔から大量の汗を流す。


(あれが……)


 蒼は恐れた。

 しかもただの恐怖ではない。

 自分の死を強く想像させてしまうような恐怖。


(あれが……《竜》)


 スコープ越しに蒼が目にしたのは、大きな兎。

 だがその兎はただの兎ではなかった。

 全身を覆う白い鱗。

 剣の如く鋭い刃を持つ太長い尻尾。

 異常に発達した筋肉質の両脚。

 ギョロギョロと動く赤い両目。

 そして口から伸びた鋭い牙。

 まさに《竜》。兎の姿をした《竜》がいたのだ。

 兎型の《竜》はモンスターの血肉を喰らい、咀嚼していた。


「アリス……撤退するわ。予想以上にヤバいわ。今すぐに……」


 蒼が喋っていたその時、兎型の《竜》の長い耳がピクリと動く。

 食事をやめた兎型の《竜》は、ゆっくりと赤い目を蒼に向ける

 次の瞬間、蒼は心臓が握り締められるような感覚に襲われた。

 自然と呼吸が荒くなり、嫌な汗が噴き出す。


(気付かれた!?ここから3キロ以上も離れているのよ!?)


 蒼は慌ててアリスの手を握り、走り出そうとする。

 しかしその時、蒼とアリスは影に覆われた。

 影の正体を目にした二人は息を呑む。


「クソ……」

「あ……ああ……」


 蒼とアリスの視界に映るのは、口から白い煙を吐く《竜》の姿。

 ギョロギョロと動く赤い目は、二人の少女を捉えていた。


「やるしか……ないみたいようね」

「そう……だね」


 蒼は対物ライフルを構え、アリスは弓を構える。

 彼女達は覚悟を決めた顔で頷き合う。


「生き残るわよ、アリス!」

「うん、蒼!」


 二人の少女と《竜》の戦いが始まった。

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