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氷光恋愛  作者: グレンリアスター
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第二十八話 覚悟

 ハンター協会から強制依頼を出された蒼は機械仕掛けの鎧を纏い、いくつもの武器を大型トラックに次々と詰め込んでいく。

 そんな彼女を、アリスは不安そうな顔で見ていることしかできなかった。


「どうしたの、蒼?そんな怖がっている顔をして」


 棚から武器を取り出していた蒼はピタリと止まる。


「怖い?私が……そんな顔をしているの?」


 氷の如く冷たい無表情で蒼は問い掛ける。

 彼女の言葉にアリスは「うん」と頷き、蒼の右手を優しく握った。


「だって……こんなに震えているよ?」


 アリスが握っている蒼の手はカタカタと震えていた。

 それを見て、蒼は目を閉じて苦笑する。


「なんでもないわ、こんなの……」


 そう言ってアリスの手から離れた蒼は近くに置いていた銃に、弾を装填しようとする。

 しかし手の震えは止まらず、いくつもの弾を落としてしまう。

 すぐに弾を拾い、銃に装填しようとするがまた落としてしまった。

 何度も弾を入れ直す蒼。

 そんな彼女の顔を掴み、無理矢理に目を合わせたアリスは真剣な表情で問う


「なにがあったの?」


 話してくれるまで放さない。

 アリスの瞳はそう語っていた。


「……《竜》が出現したの」

「《竜》?《竜》って……確かあの災害モンスターの!?」


 アリスは驚愕の表情を浮かべる。


「なんで……なんで《竜》なんて話が!なんでなの!?」

「……ハンター協会から強制依頼が来たの。東京に出現した《竜》を調査するようにって」

「なっ!」

「報酬もたくさん貰ったし、なにより拒否権がないわ。だから……」


 蒼は喋ろうとするがうまく言葉が出ず、口を閉じてしまう。


(今すぐにでも逃げ出したい。だけど……)


 蒼は冷静に絶望の未来を想像する。

 広がるのは破壊された街と、響き渡る悲鳴。

 多くの人の死体と血の海。

 そして大切な人であるアリスの死。


(最悪な未来は絶対に否定しないと)


 フゥ―と息を吐いた蒼は、心に氷の女王の仮面を被る。


「だから……行くわ」


 なんとか銃に弾を装填することができた蒼は、大型トラックに向かう。

 思考を冷たくした彼女は歩きながら、真剣な表情で告げる。


「アリス……今日はここにいて。最悪の場合は闇市にいるミクのところに行きなさい。いいわね?」

「やだ」


 アリスは即答した。

 まさかの反応に蒼は足を止めて、眉をピクピクと痙攣させる。


「アリス……言うことを聞きなさい」

「イ・ヤ・ダ!私も行く!絶対に行くから」


 アリスは激しく首を左右に振り、拒否の意を示す。


「ダメよ。今回ばかりは連れていけないわ」


 蒼はアリスの肩を掴み、「お願いだからわかって」と願う。

 しかし彼女の手をアリスは振り払う。


「行くったら行くの!」

「……アリス」


 聞いた者を凍てつかせるような冷たい声で名前を呼ぶ蒼。

 しかしアリスは目を逸らさず、真っすぐな目で蒼を見つめる。


「蒼は死ぬかもしれない依頼を受けるんだよね?それを知ってて、一人で行かせるなんて私はヤダ」


 アリスは一歩前に踏み出し、蒼に顔を近づける。


「大切な人を一人になんて、私はさせないから」


 死なせない。

 私が蒼を守るんだ。

 だから必ずついていく。

 そんな強い覚悟が伝わった蒼は、一歩後ろに下がる。


(何を言っても無駄みたいね)


 目頭を指で揉んだ彼女は、「わかったわ」と呟いた。


「連れて行ってあげるわ」


 蒼が渋々と了承すると、アリスは「よし」と可愛らしくガッツポーズをとる。


「だけど……危なくなったら自分の命を第一に考えてちょうだい。約束よ」

「うん。わかった」


 アリスは力強く頷いた。

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