第二十七話 強制依頼
『フハハハハハ!現れたな』
『現れるわ、何度でも!』
二人の少女が暮らす巨大な倉庫の中。
天井のライトを消し、大型テレビで映画を見ていたアリスと蒼は、ポックコーンとジュースを飲み食いしていた。
「うわ~……この敵、なんかエロいね」
女主人公と戦う女怪人を見て、アリスはズズズとストローでコーラを飲む。
「この作品の魅力は敵みたいよ。オススメされたから買ったけど……ただエロいだけね」
塩キャラメル味のポックコーンを蒼はポリポリと食べる。
その時だった。
二人が座っているソファーの肘掛け。
そこに置いてあったキューブ・デバイスから着信音が鳴り響く。
蒼は映画を見ながら、慣れた手付きで携帯端末を操作する。
「もしもし?今、忙しいのだけど?」
『こちらハンター協会。凍冷蒼ハンター。強制依頼です』
キューブ・デバイスから聞こえた受付嬢の焦りの声。
その声を聞いた蒼は嫌な予感を感じ、わずかに顔を険しくする。
強制依頼。それはハンターなら拒否することができず、必ず受けなくてはならない重要な依頼。
「……強制依頼ですって?」
『はい。拒否権はありません』
「私が聞きたいのはそういうことじゃない。なぜ強制依頼が出たのかってことよ」
『……実は東京のいくつもの街が崩壊しました』
蒼は目を細め、「数は?」と問い掛ける。
『すでに……五つの街が滅ぼされました。一匹のモンスターによって』
「……まさか」
『はい。恐らく……《竜》です』
受付嬢の言葉を聞いて、蒼は額から一筋の汗を流す。
《竜》。人間からあらゆるものを奪い、滅ぼす災害モンスター。
その化物が東京で暴れている。
「……依頼内容は?」
『新種のモンスターである《竜》の居場所と進行方向の調査を』
「……あまりにもリスクが高いわ。私に死ねと?」
『今は危険な状況です。頼れるのはあなただけなんです、凍冷蒼ハンター』
「しかし」
『報酬は既に振り込みました。どうかお願いします』
通話が切れた後、蒼はキューブ・デバイスを操作して報酬金額を確認する。
空中に投影された数字にはいくつもの0が書かれていた。
ハンターをそこそこ長くやっている蒼でも見たことない金額。
それを目にした彼女は、アリスには聞こえない声で悪態を吐く。
「クソが……」




