↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷光恋愛  作者: グレンリアスター
PR
23/51

第二十二話 後悔

 モンスター討伐依頼を終えたアリスは、蒼と共に家に帰った。

 アリスは暗い表情を浮かべており、目のあたりが赤く腫れている。

 そんな彼女を心配そうな顔で見ていた蒼は、ボロボロになった機械仕掛けの鎧を脱ぎ始めた。


「!」


 鎧を脱いでいた蒼の背中を目にしたアリスは、目を大きく見開く。

 蒼が負った傷は完全に塞がっていたが、大きな傷跡が残っていた。

 罪悪感と後悔という名の剣が心に突き刺さり、アリスは泣きそうな顔で俯く。


(私の……せいで)


 苦しく感じる胸を手で押さえていたアリスは、目頭に涙を浮かべた。

 その涙を蒼は指で拭う。

 彼女の瞳は、まるで妹を心配する姉のような優しさが宿っていた。


「アリス……一緒に風呂に入ろう」


<><><><>


 お湯を沸かし、浴槽に湯船を張った後、蒼とアリスは一緒に入る。

 浴槽は少し狭く、二人は脚を曲げていた。

 温かいお湯につかっていたアリスは、チラリと蒼の身体を見つめる。

 蒼の身体は細長く、だけどしっかりと筋肉がついていた。

 そして身体のあちこちに古い傷跡が刻まれている。

 アリスが古傷を見ていることに気が付いた蒼は、「……気になる?」と静かな声で問う。


「えっと……うん」


 アリスは少し躊躇いながらコクリと頷く。


「私はこのクソったれな世界で生きていくために、強くなってモンスターと戦ったわ。戦って戦って戦って……気付いたらこうなってたわ」


 蒼は自嘲するかのようにそう言って、右肩にある傷跡を指で撫でる。

 

「痛くても戦って。苦しくても戦って。辛くても戦って。まったく……昔の私は無茶や無理をしたものよ」


 蒼は無表情だった。

 しかしその無表情には、どこか過去の自分を愚かだと思っているようにアリスは感じる。


「……どうしてハンターになったの?ハンターって危なくない?生きるためなら、他の仕事をすればいいのに」


 アリスは問わなければならなかった。

 なぜ戦うのかと。

 聞かないといけないと彼女は思ったから。


「そうね」


 天井を見つめる蒼は、十秒ぐらい無言でいた。

 その沈黙がなにを意味するのか、アリスにはわからない。


「気に入らなかった。弱い自分でいるのが」


 ゆっくりと開いた蒼の口から出た言葉は、それだった。

 その言葉には、己が憎いという感情が確かに宿っていたことにアリスは気付く。

 

「弱い……自分?」

「そう。抗いたかったのよ、この地獄に。だからハンターになったの」

「……」


 蒼は右手で前髪をかき上げ、ポツリポツリと呟く。


「昔の私は……弱くて、本当に弱くて。なにも守れなかった。そんな自分が大っ嫌いだったわ」


 反吐が出ると言いたげな顔で蒼は鋭い目つきをする。

 だがすぐに彼女は優しい目をし、アリスを見つめた。


「アリス……強くなりなさい。私が言えるのはそれだけよ」


 昔の私みたいにはならないで。

 そんな風にアリスには聞こえた。

 蒼の言葉を本当の意味で理解したアリスは、瞳に決意の光を宿す。


「わかった。私……強くなる!」


<><><><>


 数日後、アリスはランニングマシンで走り込みをしていた。

 ハァハァと息を漏らし、汗を流す彼女は真剣な表情を浮かべている。

 走り込みを終えると、アリスは腕立てや腹筋などの筋トレを始めた。


(強くなる……蒼がもう私を庇って傷つかないように!)


 蒼に庇われる自分は嫌だ。

 だから強くなるんだ。

 そう自分に言い聞かせたアリスは、ダンベルを持ち上げた。

 強くなるために努力するアリスを、少し離れたところで見ていた蒼は優しい声で呟く。


「がんばれ……」


 蒼の小さな呟きがアリスの耳に届くことはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。