第十七話 料理
「ただいま~!」
闇市から帰ってきたアリスは、上機嫌な様子で最新のフードプリンター器をキッチンに置く。
鼻歌を歌いながら説明書を読むアリス。
そんな彼女を見つめる蒼の目は、どこか穏やかだった。
「あ、すごい……このフードプリンター器、調味料とかも作れるんだって、蒼!」
「嬉しそうね。アリス」
「うん!これでおいしい料理が作れるもん。あ、せっかくだし……これで手作り料理を作ろうかな」
アリスはフードプリンター器の電源を起動させ、食材を作り出す。
オレンジと半透明、黄色、茶色の四角形の物体とドロドロとした液体、そして無数の白い粒がフードプリンター器から生成される。
慣れた手付きでアリスは包丁で四角形の物体を細かく切り、水が入った大きな鍋にドロドロの液体を流し込む。
細かく切った四角形の物体を鍋に入れ、ぐつぐつと煮る。
キッチンで料理するアリスの背中を、蒼はぼ~と見惚れていた。
(将来、アリスはいい男と出会って……いいお嫁さんになるわね。きっと)
アリスが好きな男ができて、結婚する。
そう思った瞬間、蒼は胸が苦しくなるのを感じた。
嫌だ。行かないで。
そんな言葉が蒼の頭の中に浮かび上がった。
(あれ?なんで私……こんなに胸が痛いの?なんでどこにも行かないでほしいと思っているの?)
まだ出会ってもいないアリスの未来の夫。
そんな彼に嫉妬していることに気付いた蒼は、頭を左右に振る。
(いや……なに考えているのよ、私。アリスには独り立ちしてもらわないと。それにアリスが好きな人ができて幸せになるのはいいことじゃない)
蒼が自分にそう言い聞かせていると、アリスが二つの皿をリビングのテーブルに置く。
「できたよ、蒼」
「え、ええ……ありがとう」
蒼はアリスが作った料理に視線を向ける。
色々な色をした細かい四角形の具材。
香ばしい香りがする茶色の液体。
そしてホカホカと湯気を出す無数の丸い白い粒。
化学合成の材料で作られたカレーである。
「おいしそう」
「ふふん!料理の練習をたくさんしたからね」
腰に両手を当てて、「えっへん」と胸を張るアリス。
蒼は「そっか」と呟いた後、「いただきます」と言ってスプーンでカレーを掬う。
そして口に運び、パクリと食べた。
すると蒼は目を大きく見開き、ぽか~んと口を開ける。
「おいしいわ……すっごく。母さんが作ってくれた料理を思い出す」
「えへへ。やった」
嬉しそうに笑うアリスはまるで子供のようで……そして太陽のよう。
彼女の笑顔を見て、蒼は頬を紅潮させた。
「その笑顔は……反則よ」
小さな声で呟いた蒼は、黙々とカレーを食べた。




