第十五話 闇市
東京都、秋葉原にある闇市に蒼はアリスとともにやってきた。
服屋や料理店などが並ぶ街の中を見て、アリスは目を輝かせる。
「うわぁ~!お店がいっぱい~!」
「ここは闇市。ヤバイ薬から強力な武器まで売っている街よ。ここでなら色々なものがあるから、金がある時はここに来なさい」
「へぇ~……あ!ねぇねぇ、蒼!これなに?変わった植物が置いてあるけど?」
「それは脳みそが最高にして最悪なぐらいパァになる草。そのヤバい植物を売っている店には近づかないように」
街の中を歩く蒼の背中を、アリスは慌てて追いかける。
闇市の中を歩きながら、蒼は自分がよく行く店を一つ一つアリスに説明した。
「あそこの服屋はシンプルなデザインのものばかりだけど、色々な高性能な戦闘服が売っているわ」
「へぇ~」
「で、あっちは不味いけど、栄養が重視されたフードプリンターがたくさん売っているわ。モンスターとの戦闘中に食べられるからオススメ」
「もっと美味しいの食べないの?」
「で、あっちはモンスター討伐や逃走の時に役に立つ道具が売っている道具屋。少し中を覗いてみる?」
蒼は振り返り、アリスに問い掛けた。
しかし彼女の背後を歩いていたはずのアリスが、いつのまにか消えていた。
頬をピクピクと痙攣させた蒼は、指で目頭を揉む。
「どこ行ったのよ……もう」
ため息を吐いた蒼は、闇市の中を歩いてアリスを探す。
そして数分ぐらい歩いていた蒼は、すぐにアリスを見つける。
アリスは小さな店の前で、棚の上に置いてあった大きな兎のぬいぐるみを見つめていた。
「アリス……勝手にいなくならないでくれないかしら?」
「あ、ごめん。ねぇ……蒼、これ欲しいな」
アリスは目をキラキラと輝かせながら、大きな兎のぬいぐるみに人差し指を向ける。
「いや……もっと実用性のものを」
「ヤダ!これ欲しい!」
「……わかったわよ。それいくらなの?」
「一万円」
「今日、稼いだ分のほぼ全てじゃない!?」
「すみません、おばちゃん。これください」
「ちょっ」
蒼が止めようとした時には、アリスは背の小さな老婆に一万円札を渡していた。
金を受け取った老婆はニッコリと笑い、大きな兎のぬいぐるみをアリスに渡す。
「えへへへ~」
嬉しそうに笑うアリスは大きな兎のぬいぐるみを、両腕でギュ~と抱き締める。
そんな彼女を見て、ため息を吐く蒼は呆れながらも、胸が温かくなるのを感じたのだった。




