第十話 不安
「さて……アリス。とりあえずあなたには色々とやってもらうわ」
「色々?」
首を傾げるアリスに、蒼は人差し指を立てながら一つ一つ丁寧に教える。
「文字の読み書きや掃除、鍛錬……この世界で必要なもの。生きていくうえで欠かせないものを教えるわ。それになにかしていれば失った記憶を思い出すかもしれないわ」
「わかった。やってみるよ!」
ふんすふんす!と鼻息を漏らしながら、アリスはやる気を出した。
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一時間後、蒼は両手で頭を抱えた。
「……アリス。記憶がないし、文字も忘れていると思ったから、簡単なひらがなを教えたのだけど……これはなにかしら?」
蒼は頭痛を感じながら、一枚の紙をアリスに見せる。
紙に書いてあるのはひらがなとは程遠い謎の文字。
まるで呪文の如く解読不可能な文字がびっしり書かれている。
アリスは何も言わず、ただ視線を逸らす。
とても気まずそうな顔で。
「……まぁいいわ。次は掃除をしてみましょう」
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また一時間後、蒼は右手で顔を覆う。
整理整頓された綺麗だった倉庫の中が、まるで事件でも起きたかの如く散らかっていた。
そしてアリスは掃除機のホースに絡まって、動けないでいる。
「蒼……助けて」
「……今、助けるわ」
ため息を吐いた蒼はアリスを助けながら、「次よ次」と自分に言い聞かせた。
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さらに一時間後、蒼は首を上に向け、天井を見つめる。
彼女の近くにはダンベルと頭にたんこぶができたアリスが転がっていた。
「なんでダンベルを軽く持ち上げようとして、空中三回転をして転がるのよ」
蒼はアリスの将来が不安になった。
心から本当に不安になった彼女は、深いため息を吐く。
「この子……本当にどうするのよ」
蒼の声が虚しく響いた。




