第九話 不思議な子
「まずこの世界のことを簡単に教えてあげるわ」
「うん。お願いします、蒼ちゃん先生」
「蒼ちゃん先生はやめて。普通に蒼でいいわ」
「わかったよ、あおっち」
「あなた記憶がある時、アホだって言われていたでしょ?」
蒼は謎の少女にこの世界の常識を教え始めた。
いくら記憶がないからとはいえ、何も知らないのはまずいと思ったからである。
「この世界はバーサーカー・ウイルスっていう最悪なウイルスによって汚染され、多くの人が死んだの」
「ふむふむ」
「バーサーカー・ウイルスのせいで動物は狂暴化し、モンスターへと変異したの。そのモンスターのせいで人間が生活できる場所は失いつつある」
「なるほど~」
「この世界はまさに地獄。私達はこの地獄で生きていかなくちゃいけないのよ」
「へぇ~」
蒼の話を聞いていたアリスは目をキラキラと輝かせ、楽しそうに笑みを浮かべた。
そんな彼女を見ていた蒼は首を傾げる。
「なんで笑っていられるの?」
「え?だって面白いんだもん」
「面白い?こんなクソみたいな世界の話が?」
「うん!」
コクリと頷いたアリスはベットの上に立ち、両腕を広げる。
「知らないことを知るって面白いし、楽しいでしょ?」
「!」
「地獄のような世界なんでしょ?なら余計に楽しまないと!」
「アリス……」
「だから楽しもう!笑いながら!」
宝石のように、そして光のように眩しく笑うアリス。
そんな彼女から蒼は目が離せなかった。
離すことができなかった。
「不思議な子ね」
蒼は目を細めて、小さく呟く。
彼女の表情は、どこか少しだけ穏やかだった。
「そんなあなたにこの地獄で生き抜く方法を教えるわ」
「なになに!?」
アリスは興味津々に目を輝かせる。
「強くなること、そして金を稼ぐこと。この二つよ」
「……なんか夢がない」
「夢がなくていいのよ」
どこか残念そうに俯くアリスに、蒼は真実を告げる。
「強くなれば自分を守れる。金を稼げれば飯が喰えて、寝る場所が手に入る。だから強さと金が必要なの」
「強さとお金……」
「こんな世界よ?いつ死んでもおかしくない。なら生き残る方法を考え続けるの。……もし強さと金があれば、明日を生きられるわ」
真剣な表情で蒼はアリスに教える。
「抗い続けなさい。例え地獄でも」
「……わかった」
アリスは力強く頷いた。




