魔王襲来
「……アンタが今代の魔王ってとこかしら?」
「いかにも」
黒い男が答えた。
「魔王だと……!?」
「こいつが……!?」
勇者パーティに動揺が走る。
俺は聖剣を地面に突き刺すと魔王に対して魔剣を構えた。
「ふん、随分と脆弱な契約者だな」
魔王はこちらを刺すような視線で見ると言った。
「……お前にその剣は使いこなせない」
……来る!と思った時にはすで魔王は目前に迫っていた。
魔王が剣を振るう。かろうじてそれに魔剣を合わせる。……が、ものの一撃で魔剣ははるか後方にふっとばされた。
「ぐっ」
「主殿!」
レイアが吹雪を放つ。……魔王はそれを一瞥すると剣をレイアに向けて振るった。
「がっ……!」
剣から発せられた何かがレイアを吹っ飛ばした。
「皆行くぞ……!」
レオンが号令をかける。
勇者レオンと魔術師フィーネが呪文を唱え始める。
聖女セシリアが補助魔法を剣士ガルドにかける。走り出すガルド。
「ふむ」
突進したガルドの一撃を魔王はいともたやすくはじき返した。
「ガルド下がれ!」
即座に後退するガルドに合わせてレオンとフィーネが魔法を放つ。
「極大雷魔法!」
「極大炎魔法!」
二人の上級魔法が魔王を直撃する!
爆煙に包まれる辺り一帯。
「……やったか!」
勇者レオンが叫ぶ。
しかし、煙の中から魔王の姿がはっきりと浮かび上がる。
「馬鹿な!」
再び剣を振る魔王、吹っ飛ばされる3人。……3人とも傷口が深い。あれは致命傷だ。
聖女セシリアが魔法を放った。
「グランドヒール!」
勇者パーティの傷口がふさがっていく。全体完全回復魔法を使ったのだ。あれは魔力消耗が激しく使ったらほぼ魔力が枯渇する聖女の奥の手だ。
「く……あれで駄目なのか……」
勇者レオンが呟いた。
「聖剣だ!……聖剣ならきっと勝てる!」
剣士ガルドが叫んだ。
聖剣に向けて走りだすレオン。その間の時間を稼ぎに魔術師フィーネが魔王に魔法を放つ。
「炎魔法連射!」
飛んでくる火球を剣ではじき返す魔王。
その間に聖剣を手に取った勇者レオン。
「聖剣ユグドラシオンよ!我に魔王を倒す力を与えたまえ!」
天高く聖剣を掲げるレオン。その姿はまさに勇者だった。……が。
「なぜだ……!?なぜ光らない!?くっそぉぉおおおおおお!!」
魔王に向かって突っ込んでいく勇者レオン。魔王はそれを一撃で薙ぎ払った。
「ぐぉ!」
かろうじて聖剣で魔王の攻撃を防いだものの聖剣はふっとばされた。すると勇者パーティの一連の攻撃の間に魔王から距離を取っていた俺の近くに聖剣が突き刺さった。
手に取ると、再び金色に輝きだす聖剣。
「……適合したか。だが模造品に何ができる」
魔王が一瞬で距離を詰めてくる。その攻撃を防ぐこと回数にして5度。だが6撃目の攻撃で聖剣は吹っ飛ばされた。
「終わりだ……」
魔王が剣を構える。
これで終わりなのか……?こんなまだなにもできていないも関わらず、終わる。まぁ俺にしちゃよく頑張った方だろう……なにせ相手は魔王だ。誰も文句は言わないだろ……
「諦めてんじゃないわよ!!」
魔剣状態のセティが飛んでくる。俺は反射的にそれを掴み魔王の一撃をはじいた。
「あんたが死んだら誰が私の魔力集めをするっていうの!」
2劇目、3撃目の攻撃を防ぐ。
「責任を取りなさい!あんたは私のマスターなんだから!!」
セティにマスターと言われた瞬間、体中に今まで感じたことない程の力が漲る。
そのままの勢いで俺は魔王に大上段からの一撃を浴びせた。
「がっ!」
俺が放った一撃は魔王を奴の剣ごと切り裂いた。
「馬鹿な……ここにきて完全な契約を結んだか……」
手傷を負った魔王は瞬時にその場を離れると転移魔法を展開した。
「覚えておけ。アルセティオール。貴様は私のモノだ……」
「待ちなさい!」
不穏な言葉を言い残し、魔王は闇の中に消えていった。
魔王が消えて辺りに静寂が戻ってくる。
「ありがとうセティ。助かった」
「ふん。アンタに死なれると私が困るのよ」
「そういえば、さっきお前俺のことをマスターって呼んでいたな?対等な契約じゃなかったのか?」
「ふん、アンタの聞き違いじゃないの?」
そうやって素直じゃないのがいつものセティらしくて何だか可笑しかった。
「マスター……」
「何だ?結局マスターと認めるのか?素直じゃないな本当に」
「私じゃないわよ」
「マスター……」
その声は、背後から聞こえた。
振り返ると
――誰もいないはずの場所に、
金髪青目の少女が立っていた。
読んでくださってありがとうございます。
評価や感想をいただけると執筆の励みになります。




