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97. ループ

「8回目?!」


 私たちの動揺に対してジネットも動揺した。


「ええ、8回目らしいです。私もにわかには信じられへんかったんですが」


「サンバチスト様もループしてらっしゃるんですか?」


 ジネットは首を横に振った。


「それは無いと思います。サンバチスト様も最初は疑ったようですので」


「どうして信じてもらえたんですか?信頼を得るような情報をタイムリーパーがもたらしたということですか?」


「そのようです。ビンルイが言うに、人が絡んだ出来事は変わることがあるけれど、自然災害は変わらないちゅうことで何月何日に大嵐が発生してどこそこに被害が出たとか、地面が大きく揺れてどこかが崩れたとか、そんなんを言い当てたらしいです。それでサンバチスト様やクレマンス様は信頼したようです。そしてビンルイは今まで体験してきた7回目までの世界の全てで魔王国が攻め込んできたことを伝えました」


「魔王国が?」


「だからビンルイは魔王国の侵攻を回避するため色々と試してきたようなんです」


「7回目以前の話もタイムリーパーから聞いているんですか?」


「ざっくりとした内容ではありますが、魔法学校の職員は聞いてます」


「その話を伺っても?」


「ええ。最初の人生ではヴァッヂ王国のただの商人やったそうです。その時に魔王国に攻められて五大国の人間が滅亡したいうことなんです」


 私たちは揃えたように「滅亡?!」と反応した。

 それに対してジネットが少々狼狽える。


「あくまでビンルイから聞いた話です。ほんで、気ぃついたら2回目の世界に戻ったようで。で、赤ん坊からやり直すんのではなく人生の途中からやり直したらしいんです。そのせいで、2回目の世界では1回目の出来事は夢やと思ったらしいんですよ」


 タイムリーパーの気持ちは分からないでもないなと思った。死んだと思ったのに、気づいたらいつもの日常で周りも何も変わっていないという状況であれば、私も1回目は夢だったのかもしれないと思うかもしれない。


「でも、生活していくと夢での出来事が実際に起こるっちゅうんが何度もあって。ほんで、自分は未来を予見できるようになったのかと思ったようです。そしてその予見の力が本当なのであれば、このままいくと魔王国に攻められて五大国の人間が滅亡する時がやってきてしまう。だから、ビンルイは周囲にその話をしまくったらしいんですが、誰も信用してくれへんくて。で、案の定魔王国に攻められて五大国の人間が滅亡して、ビンルイは3回目の世界に戻ったようです」


「戻った地点は同じ?」


「はい、その時は同じやったようです」


「その時は?」


「前回と違う選択肢を選ぶと、その選んだ地点に戻るらしいです」


「違う選択肢?」


「3回目は自分はタイムリープできるんだと確信したようです。ほんで、魔王国の侵攻を止めるためにはサンバチスト様の力が必要だと考え、サンバチスト様に近づくためには側近の魔法使いに近づく必要があると考え、自分のいるヴァッヂ王国の魔法使いウィザード・ミレーユに近づこうとしたようです。正面突破で突撃したようですが相手にされず、3回目もまた魔王国に攻められて五大国の人間が滅亡して、ビンルイは4回目の世界に戻ったようなんですが、その地点はウィザード・ミレーユに突撃する直前やったそうです」


「ウィザード・ミレーユに突撃というのが2回目とは違う選択肢になったわけですね」


「そうらしいです」


「4回目はマチュヤ王国に移動したようです。ほんでウィザード・ガエタンに突撃したらしいんですが、それも上手くいかんくて、魔王国に攻められて五大国の人間が滅亡して、ビンルイは5回目の世界に戻ったようなんですが、その地点はマチュヤ王国に移動した直前やったそうです」


「ウィザードと知り合うのは難しいんですか?」


「一般人がウィザードに近づくのは容易ではないようです」


 この世界に来て早々に一般の獣人族がロランスから魔法を習っていたのを見ているので、五大魔法使いと知り合うのは簡単なのかと考えていたけれど、実は難しいのか。


「ほんで、5回目では少し違うルートでウィザード・ガエタンに近づくことにしたら、ウィザード・ガエタンに近づくことまでできたそうなんですが、魔王国の侵略は止められず、6回目に」


「戻った時点は4回目と違うルートを選んだ地点?」


「そういうことのようです。6回目ではエンガ王国に移動してウィザード・ファビアンに近づき、サンバチスト様まで辿り着いたようですが信頼を得ることができなかったようで、その時にサンバチスト様より出された証明の方法が『いつ、どこで、何が起こるか』だったようですが、ビンルイは『どこで何が起こるか』は言えても、『いつ』が言えなかったようで。6回目は諦めて、自然災害の発生の日を覚えることにしたようです」


「諦めた…?」


「ええ、なので6回目も魔王国に攻められて五大国の人間が滅亡して、ビンルイは7回目の世界に戻ったようです。7回目に戻った場所はエンガ王国への移動を選択した時点。でも、ビンルイは6回目と同じルートを辿ってサンバチスト様に近づくことにしたようです。違ったのは7回目では『いつ、どこで、何が起こるか』を証明して信頼を得ることができ、サンバチスト様が一つの方法として勇者召喚を行ったちゅうことでした。結果、勇者の活躍によって魔王国の侵略を遅らせることまではできたようなのですが、最終的にはやはり滅亡させられたと」


「それでもダメだったんですね。だから8回目の人生に突入してるんですもんね」


「ええ。でも、ビンルイとしては魔王国の侵攻を遅らせることができたというのが成功体験になったようです。未来を変えられる可能性があると確信したようです」

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