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96.本来の任務

 ジネットは「そうですねえ」と少し考えてから、


「地下道のダンジョンでエイタ様が覚醒したことはお聞きになりましたか?」


 と訊いてきた。


「はい、聞きました」


「お二人がハイリスから戻って勇者パーティを組む頃には私は世話役から離れておったのですが、首都ベンチャを離れる時に挨拶に来てくれまして。エイタ様が覚醒したことでサンバチスト様から本来の任務を与えられたちゅうことで、エンガ王国に行くことになったと」


「本来の任務?」


「はい、私もその時に初めて伺ったのですが、本来の任務ちゅうのが魔王国側に現れるダンジョンを全て潰すことやということやったんです」


「魔王国側に現れるダンジョン?」


「キレネー山側に現れるダンジョンは問題ではないらしいのですが、何やら魔王国側に現れるダンジョンは魔王国と繋がってしまう可能性があるゆうことで、リスクを減らすために現れたら消滅させなければならないらしく」


「そのために二人はサンバチスト様に召喚されたということですか」


「ハルコ様はそう仰ってました。エンガ王国に入った後はウィザード・ファビアンと協力していくいうことでした」


「エンガ王国だけに行くということだったのですか?マチュヤ王国は?」


「その時はエンガ王国に行くと仰ってましたが、あくまで最初の地がエンガ王国いうだけで、マチュヤ王国も魔王国と接しておりますので、ダンジョンが出現したならば消滅させるために行かれる可能性は高いのではないでしょうか」


 遥が「あのう」と話に入ってきた。


「タイムリーパーの話は聞いたことありますか?」


 ジネットは頷いて「ええ」と答えた。

 タイムリーパーの話はこの世界ではかなり浸透しているのだろうか。でも、マルセルもヤニックも初耳のような反応をしていた。エイタ君や春子と関わった人は聞いたことがあるということだろうか。

 遥はジネットの反応を受けて話を続ける。


「実は私たち、2人がハイリスでお世話になった宿屋の主人に会って、海で特訓していた当時の話を色々聞いたんです。その時に、タイムリーパーから聞いた話か何かを受けて、サンバチスト様がエンガ王国のダンジョンを整理するよう二人に命じたという話を聞いたのですが」


 ジネットは「ああ」と何かを思い出すような声を漏らしてから、


「魔王国側のダンジョンの件はハルコ様から聞くまで知らんかったんですが、召喚に関してはタイムリーパーがサンバチスト様に勇者を召喚するよう助言したと聞きました」


「え、タイムリーパーの助言はエンガ王国のダンジョンを整理することではなく、二人の召喚自体だったんですか?」


「ええ。でも、元々二人召喚する予定やなかったみたいです。勇者を召喚するだけの予定やったのが、今回は少し早く召喚してしまったことが影響したのか、もう一人召喚されたということで」


 ジネットの返答に少し引っ掛かったので私は訊いた。


「ちょっと待ってください。『今回は』とは?その話は春子やエイタ君から聞いた話ではないのですか?」


「いいえ、本人です」


「本人?タイムリーパー本人ですか?」


 ジネットは顔色を変えることもなく「はい」と答えた。

 私たちは一斉に驚いた顔をしたのだろう。それに対してジネットが少し狼狽えた。

 遥は身を乗り出してジネットに迫る様に言った。


「どういう経緯でタイムリーパーと会ったんですか?」


「彼がどういう経緯でベンチャ王国に入ってきたのかまでは分からへんのですが」


「彼?タイムリーパーは男性なんですか?」


「はい、男性です。名前はビンルイ」


 この世界に来てから出てきた名前は西欧系の名前が多いように思っていたけれど、その名はアジアっぽい名前だと思った。


「名前もご存じなんですか?」


「ええ。今回の彼はベンチャ王国の魔法学校に一時期関わっておりましたので」


 私たちは再び一斉に驚いた顔をしたのだろう。それに対してジネットが少し狼狽えた。


「先ほどから『今回』と仰ってますが、それはどういう意味ですか?」


 私が訊くと、ジネットは申し訳ないという表情をしてから、


「説明不足ですんまへん。今のこの世界は、ビンルイにとっては8回目の世界だそうです」


 とんでもない情報が急にもたらされ、私たちは一様に動揺した。


「8回目?!」

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