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94.勇者の風穴に行く方法

 シェリナが持ってきた紙には『プティアヴァルレの巣 30個』と書いてある。

 それを見た瞬間、マルセルが「おいおいおい」と面倒そうに言った。

 しかし、シェリナは気にする様子もなく続けた。


「『勇者の風穴』の近くにプティアヴァルレちゅう鳥がおります。その鳥の巣をいくつか取って帰ってくるちゅう仕事です」


 遥が「また鳥の巣…」と呟く。


「以前、鳥の巣関連のお仕事されました?」


「ちょっと前にギガンモーレイの巣の粘液を採りに行く仕事を」


「ほ~、そうですか。それは大きな仕事されましたね。それに比べたら何ちゅうことないですよ。ちっこい巣を30個ほど取ってくるだけです」


 マルセルは「簡単に言うなあ」と呆れ気味に言った。


「簡単ではないの?」


 私が訊くと、マルセルが答える。


「まず、巣を見つけるのが大変だ。小さいからな。親指位の小さな鳥なんだ。その巣というだけで小ささがイメージできるだろう。そんな小さな巣を森の中で探すんだぞ。さらに、巣の中に卵やヒナがいるものはダメだ。鳥が怒って総攻撃をしてくる」


 そこにヤニックが被せてくる。


「その総攻撃が大変なんですよ。仲間意識が強い鳥なので、1匹が襲われたと分かると、集団でその一匹を助けに来ます。それはもう至る所から。蜂に襲われるみたいな感じです」


 大変そうだということは分かった。


「でも、この仕事という理由があれば『勇者の風穴』には近づけます。ただの見学にするという場合は、先ほど言った通り許可証を発行して貰って行くっちゅう形になります。どうされます?」


 遥が「許可証は面倒なの?」とマルセルに訊く。

 マルセルは首を傾げる。


「俺もこの種の許可証は取ってことが無いから分からない」


 代わりにシェリナが答える。


「面倒やから、この仕事を受けることをお勧めしとるんですよ。ウィザード・ロランスの紹介状をお持ちですのである程度は簡略化されるとは思いますが、誓約書を書かされるとは思います。あと警備兵が同行すると思います」


 遥が「どうすればいいの?」とマルセルに訊く。


「任せるよ。この仕事をやってみたいならば引き受けたらいいし、許可証を取りに行く方がいいと考えるのであればそちらでいいと思う」


「夏ちゃんはどうしたい?」


 なんとも判断材料が少なすぎる2択だけれど、


「その森は勇者が特訓していた森ですか?」


 私はシェリナに訊いた。


「ええ、そうですよ」


「だったら、警備兵がいない方が動きやすいか…。ご飯代くらい稼いでもいいかも」


 私は遥、マルセル、ヤニックを見る。


「それなりに大変だぞ」


 マルセルが言う。


「うーん、そこがネックなんだけど、今後のことを考えると何事も経験しておく方がいいと思って」


 3人は分かりましたという風に頷く。

 シェリナは紙をさらに私たちの方に押し出した。


「では、こちらお願いします。あ、行くなら明日の朝の方が良いですよ」


「何でですか?」


「今から行っても日が暮れてまいますし、夜の森は物騒ですからね」


「分かりました」


「あと、今日このあと暇やというんやったら、鍛冶屋シプリアンを訪ねたら良いかと思います。そこで働いとるジネットという女性が勇者と人魚の世話係をかつてやっとりましたので、当時の話を聞けるかと」


 それにはマルセルが反応した。


「鍛冶屋シプリアン?そこで今女性が働いとるんか?」


 マルセルの反応に対して遥が反応した。


「それはどういう意味?昔は女性はいなかったの?」


「いつもムスっとしたオッサンが刀鍛えてるだけの場所だ。女性なんて1年前はいなかった」


 シェリナの「結婚したんよ」という回答に、マルセルは顎が外れるくらい驚いた顔を返した。


「どういう経緯で?」


「ジネットからの猛アプローチ」


 シェリナの回答に、マルセルは更に顎が外れるくらい驚いた顔を返した。

 その後、私たちはシェリナに進められた鍛冶屋シプリアンに向かった。場所はマルセルが分かっていたので、最短距離で向かう。近づくにつれカンカンという鉄を叩く音が大きくなっていく。鍛冶屋シプリアンは表通りから外れた人通りの少ない場所にあった。扉は開きっぱなしで、奥からは熱気が漏れ出てきている。カンカンカンという鉄を叩く音が響いている。

 マルセルは静かに中を覗く。

 中では大柄な男がカンカンと集中して鉄を叩いている。


「あれが終わるまでちょっと待つ感じだな」


 しばらく外でしばらく待っているとカンカン音が消えた。

 それを合図のようにマルセルはマジックバッグから剣を取り出して、「すんませ~ん」と中に入っていった。

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