93.首都ベンチャでの勇者パーティ
シェリナはそのまま首都ベンチャで勇者パーティが引き受けていた仕事について話してくれた。
「先ほど話したように、勇者パーティが主に引き受けていた仕事は魔獣討伐です。しかし、最初から上手くいったわけではありまへんでした。特訓でコントロールが良くなったとはいえ魔術の使い方が素人すぎるいうことで、しばらくの間はビシアとエルフィの元でこの近辺の森に現れる比較的弱い魔獣相手に特訓しとりました」
確かにSランク魔術師の元で修行とか、首都ベンチャ近くの森で魔物を倒す特訓とか、そんな情報があった。それと、一番気になっていたのが地下道の件だ。
「地下道のダンジョンで魔物討伐したという情報を聞いたのですが、森での特訓の後の話ですか?」
シェリナは「地下道ダンジョンの件をご存じで?」と目を開いて、首を横に振った。
「いいえ、特訓の最中の出来事です」
「最中?」
「森で小物相手に魔術訓練をしていた同時期に地下道ダンジョンの騒動がありまして、ここらの冒険者が総出で討伐に動くことになったになったんですよ。この地下道がやっかいで、計画的に掘られたものではなく、住民が勝手に掘ったものなので、道も広かったり狭かったり、真っすぐだったり曲がっていたり、上がっていたり下がっていたりでとても入り組んでおって、その中をダンジョンから出てきた魔物が至る所に溢れていってしまって」
確か地下道は敵の襲来から王族が逃げるためのものではなく、庶民が闇取引をするために勝手に造ったもので、公共工事ではなく計画性の無い掘られ方をしたため時折崩れて人が生き埋めになったり、地上が陥没したりで問題になったという話だった。魔物を探すつもりで進んだ先が崩れていて前に進めないとかもあったのではないだろうか。
「さらに厄介やったんが、どこが大元のダンジョンなのか分からんちゅうとこやったんです。大元のダンジョンを潰さない限りは魔物がどんどん出てくるということで、魔物を倒さんといかん、大元のダンジョンも探さんといかんちゅう状況でもう大変やったんですよ」
聞いただけで大変そうな事件だったことは想像できる。
「ほんで、勇者パーティもこの中の一角を担当することになりまして。さすが勇者というべきか、勇者が行った先が大元のダンジョンやったんです」
マルセルが驚いたように「それは凄い」と言った。
「どういう経緯でボス部屋まで辿り着いたかまでは分からんのですが、ボスは三つの頭を持つ大きなトカゲのようなもので、勇者パーティーは始めこそ梃子摺ったものの、訓練の成果が出たようで勇者が覚醒してボス討伐を果たし、ダンジョンは消滅しました。さらにその時の攻撃は地下の岩盤を突き抜けて首都ベンチャから離れた森の中に達しました」
「それが『勇者の風穴』ですね。観光地になっていると聞きました」
私が言うと、シェリナは頷いた。
「よくご存じで。しかし、今は知る人ぞ知る地になっております。マルセルは行ったことある?」
シェリナはマルセルに振る。
マルセルは首を横に振って否定した。
「いや、俺は知らんかった」
シェリナは頷いて、
「そやよな。ダンジョン騒動の直後は見物客で賑わって、その時にそこに街を作ればまた違ったんやろうけど、ただの穴やから二度も三度も見に行く場所ではないちゅうか。だから次第に人も行かなくなって、マルセルがいた頃、ちょうど1年くらい前は地下道通って行ける人通りのない場所ちゅうことで闇取引のする人くらいしか行かんくなってんよな」
「1年くらい前はちゅうことは、今はまた違うんか?」
「今は警備兵が立っとる。闇取引の名所になってもうたからな」
私はシェリナに訊いた。
「その『勇者の風穴』に行ってみたいのですが、地下道を通っていくのと、地上から森を抜けていくのはどちらが良いんですか?」
「それは圧倒的に森を抜けていくのが良いですよ。地下道はそもそも危険ですので通ることはお勧めしません。いつどこで崩れるか分からんのが地下道です。ただ、今は警備兵が立っとるような場所になっとりますので気軽に行くことはできません。警備オフィスに行って、申請書書いて、許可証貰って、それ持っていく形になりますが、そうですねえ、あとは、どうしても行きたいというのであれば…少々お待ちください」
シェリナは立ち上がり、仕事依頼が貼りだされている掲示板に向かい、一枚の紙を取って戻ってきた。
「これを引き受けるちゅうのはどうです?」
と、その紙を私たちの前に出した。




