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92.勇者の同行者

「ありがとうございます。本物であることが確認できました」


 受付の女性・シェリナはロランスの紹介状をテーブル席で待っていた私たちに返した。

 そしてシェリナはマルセルに言う。


「マルセルがウィザード・ロランスに弟子入りしたらしいという噂が本当やったとは驚いたわ」


 マルセルは不服そうな顔をする。


「ここの奴らはみんな信じてなかったっちゅうこと?」


「誰が信じられると思う?魔法使えへん剣士が五大魔法使いの一人の弟子になったなんて」


 シェリナは視線を私と遥に戻した。


「勇者の同行者を知りたいちゅうのは何でですか?」


「勇者と一緒にいる人魚は私の妹で、この子は人魚の娘で。7年前に海での事故で彼女は行方不明になって、既に亡くなっているのかもしれないと覚悟していたのですが、この世界で生きていたと知って」


 シェリナは目を丸くして驚いている。


「あなた方も召喚者ということですか?」


「いいえ、私たちは誰かに召喚されたわけではなく、竜巻に巻き込まれてこの世界に落ちてきました」


「竜巻に?!」


「幸いウィザード・ロランスがいた場所に落ちたため、ウィザード・ロランスの魔法で墜落を防げて、無事生きたままこの世界に」


「そうですか。それでウィザード・ロランスの紹介状を」


「はい。ウィザード・ロランスがご厚意でマルセルを案内人として付けてくださって」


 シェリナはマルセルを見る。


「ウィザード・ロランスに(てい)よく追い出された感じ?」


 マルセルはムッとした顔をして言った。


「黙れ。案内人として元冒険者の俺が最適だった、それだけだ」


 シェリナは「はい、はい」とマルセルをあしらって、私たちに視線を戻した。


「それで勇者の同行者について知りたいちゅう理由は?」


「妹が今どこにいるのかというのももちろん知りたいのですが、彼女が7年間何をしていたのか、どんな人と出会っていたのか、今どんな人と行動を共にしているのか知りたいんです」


 シェリナは小さく頷いて「なるほど」と言ってから話を続けた。


「まず前提として、今、勇者パーティがどこにおるかは把握していまへんし、現在の勇者パーティの姿も知りまへん。お伝えできるんは、勇者が首都ベンチャにいた当時の勇者パーティについてです」


「はい、構いません」


「召喚された当時、勇者はまだ子供で。確か8歳か9歳かそんくらいでした。勇者というだけあって子供とは思えないほどの魔力量を保持しておったのですが、攻撃のコントロールが悪くて、勇者としての活躍ができるレベルには到達していなかったので、一時期ハイリス近くの海で特訓をしとりました」


「はい、ハイリスの宿屋の主人から聞きました」


「その特訓を終えて成長した勇者は首都ベンチャに戻ってきて、うちに来た仕事依頼の中の魔獣討伐系で特訓をするようになりました。しかし、仕事を受けるには4人以上のパーティを組む必要があって、勇者と人魚の他に少なくとも2人は追加しなければなりまへんでした。そこでウィザード・クレマンスがかつての弟子に声をかけて勇者パーティに加えました。勇者は火属性で、人魚は風属性で」


 シェリナがそう言った瞬間、遥が「私と同じだ」と口にした。

 シェリナは続ける。


「彼は木属性で、勇者と人魚と違う属性という意味でも合ってたんですよ」


「彼ということはお弟子さんは男性だったんですね」


「ええ、さらに言うと、かなり年配の方でした。元々王国軍の帯同魔術師をされておったのですが、引退してベンチャ王国の魔法学校で臨時講師をされてました。名前はビシア」


「そのビシアさんが情報にあったウィザード・クレマンスの一番弟子ですか?」


「正しくは自称一番弟子です。自称一番弟子はたくさんおります。ウィザード・クレマンスは弟子に順位は付けへんので、自分が一番弟子だと各自アピールすんのですよ」


 シェリナの回答に引っかかったようで、遥は「たくさんいる?」と聞き返してから、マルセルに訊ねた。


「弟子がたくさんいるの?てっきり弟子を取らないのかと思ってた。ではどうしてマルセルは弟子になれなかったの?」


 マルセルは眉間にしわを寄せた。


「俺の傷口をえぐるな。『私には貴方を魔術師にすることはできない』とストレートに言われたんだよ」


 シェリナは「話を続けても?」と遥に聞き、遥は「どうぞ」と答えた。


「次にパーティに入ったのはタンクのヘルラーです。ヘルラーは腰を悪くしたため冒険者を引退してマッサージ師をしておりました。その常連がビシアでした。マッサージ中の雑談でビシアが勇者パーティに加わったとの話を聞いて、自分も加わりたいとビシア伝いで立候補しました」


「腰を悪くしていたのに?」


「その頃には腰の調子も戻っておったようです。ヘルラーが土属性で勇者パーティにいない属性であったことも加わることとが出来た理由です。そして最後に加わったのがハーフエルフのエルフィです。エルフィはSランク魔術師で腕は確かなのですが、特定のパーティに加わらず仕事に応じて様々なパーティを加わるというスタイルの冒険者でした。ちょうど次の仕事を探している中で、勇者が水属性の魔術師を探していると知って、勇者に興味を持ったエルフィが加わりました。以上が勇者パーティのメンバーです」


 遥がシェリナに訊ねる。


「火、風、木、土、水の属性を集めた理由は?」


「それはウィザード・クレマンスのアドバイスからのようです。全ての属性がいた方がええと」


「光属性は?」


「光属性は滅多におりませんから」


 シェリナの回答を受けて、遥がちらりと私を見た。

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