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80.追加の属性

 受付の男性はカウンターテーブルに首都シャルタルでの検査の時に使った水晶のような透明な球体を置いた。大きさは二回り位小さい。首都シャルタルの球体がバスケットボール大だったのに対して、目の前の球体はハンドボールくらいのサイズだ。


「どなたからでも構いませんので、こちらに手を置いてください」


 受付の男性が私たちを見る。


「では、僕から行きます」


 とヤニックが前に出た。そして球体に手を置いた。すると、球体の中に茶色い埃っぽいものがぐるぐる渦を巻き始めた。首都シャルタルの時と同じである。


「はい、ありがとうございます。では次の方」


 とても淡白に淡々と進んでいく。


「じゃあ、私が先にやるね」


 と遥が前に出た。そして球体に手を置いた。すると、球体の中で白っぽい雲のようなものと薄っすら青い線のようなものがぐるぐる渦を巻き始めた。これも首都シャルタルの時と同じである。

 受付の男性は、あの時のアルノルドと同じようにその様子を興味深く見た。


「冒険者証の登録の通りですね。はい、ありがとうございます。では、最後、ナツコさんですね」


 私は遥に代わって前に出て、球体に手を置いた。すると、キラキラとした小さな星のような、太陽の光を受けた塵のような、とにかく小さな黄色っぽい光の粒がいくつも出てきてぐるぐると渦を巻き始めた。その中に七色に光る小さな粒もいくつか混じっている。これも首都シャルタルの時と同じである。

 受付の男性は、アルノルドと同じようにその様子をじーっと見て「これは珍しい…」と呟いた。そして、


「こちらも冒険者証の登録の通りですね。もう結構です」


 と言った後、私を見て聞いてきた。


「過去、何回発動されてますか?」


 私は質問の意味が分からず、


「何をですか?」


 と聞き返した。

 受付の男性は真顔で答える。


「この七色の光の発動です」


「それは…分からないです。首都シャルタルでの検査の時も七色の光については指摘されましたが、その後の試験でも能力の確認ができなかったようで」


 受付の男性は「そうですか」と呟いてから、


「これは参考程度にお聞きください」


「はい」


「以前、似た属性を持つ方がいらっしゃいまして、赤、茶、青、緑の四色を持たれていたのですが、それはそれぞれ火、土、水、木の属性を意味していまして、その方のベースの属性は風だったのですが、火や土、水、木属性の魔法も使うことができました」


 なるほど、別の色は別の属性も持っているということか。


「そういうことなんですね!」


「あくまで参考です。ナツコさんも同じとは限りません」


「あ…はい、分かりました」


「但し、もし同じだったとしたら注意が必要です」


「注意?」


「あくまでその方の話ですが、本来の属性以外の魔法を使うと徐々に光の量が減っていって、一定量使生きると、その属性の魔法は使えなくなります」


 無限に使えるものではなく、有限の能力ということか。


「その方は、今は?」


「かつて持っていた別属性の能力は消えて、本来の属性の風属性のみ残っている形です」


「その風属性の能力が落ちたということは?」


「それは無いようです。他の色は本来の能力の上に追加された能力だったようです。何度も言いますが、あくまで参考なので、ナツコさんも同じとは限りませんから」


 受付の男性が真面目な顔で念押ししてきたので、私は真面目な顔で答えた。


「はい、分かりました。ありがとうございます。参考にします」


 受付の男性は頷いてから「少々お待ちください」と私たちの冒険者証を持って受付の背後の扉の中に入っていった。


「冒険者証は新しく発行するんじゃないの?」


 私がマルセルに訊く。

 マルセルは小さく首を振ってから


「今の冒険者証をそのまま使うんだ。番号はそのままベンチャ王国の冒険者リストに登録するし、冒険者証にベンチャ王国の情報を追加する。国境門で冒険者証を透明のボックスに入れてただろう?あれに反応するような加工を施す」


 私と遥とヤニックは「へえ」と返事をする。

 その後、遥が少し不安そうに確認してきた。


「さっきの話気になるんだけど」


「追加された属性魔法の話?」


「そう。私もさ、雲みたいな風属性の中に青い線みたいなの入ってたでしょ。アルノルドがあれを波の能力って言ってたでしょ。私のスティールは波の能力を使ってるって」


 マルセルがそれに「確かに」と反応した。


「でしょ。さっきの話だと本来の属性に追加された能力は使い過ぎると消えるって。私、何も考えないで使っちゃってるよ。ヤバいよね。使いすぎ良くないよね」


 確かに同じ理論なら、遥の波の能力も使用制限があるかもしれない。


「うん、そうだね。その可能性を考えておいた方がいいかもね」


 私は遥にそう返した。

 遥は「だよね」と動揺を隠せない顔をする。

 少しして「大変お待たせしました」と受付の男性が戻ってきて、私たちに冒険者証を返した。


「本日よりこちらの冒険者証を使えるようになっておりますので、何か気になる仕事がありましたら、またカウンターにお越しください」

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