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78.いざ、ベンチャ王国へ

 私も遥もマルセルも疲れて回復魔法のことをすっかり忘れていた。ヤニックの提案を受けて、私は全員に回復魔法を施した。おかげで全身の疲れが取れてスッキリした。


「ヤニックは遠慮してないで、もっと早く言ってよ」


 と遥が文句を言っている。


「いや、皆さんがそこまで疲れているとは気づいてなくて」


「ヤニックは平気だったの?」


「まあ、これくらいなら」


「体力お化けだな」


 こうして私たちは残り半分を進み始めた。残り半分という気持ちと、対岸がどんどん近づいてくるという実感のおかげで足取りは軽かった。まあ、定期的に回復魔法で疲れをとったという効果もあるのだけれど。

 やがて、ベンチャ王国側の国境門が見えてきた。


「着いたー!」


 遥が両手の拳を突き上げた。


「この国境門通過が面倒なんだが」


 とマルセルは私たちを見た。


「ロランス様の紹介状の用意をしておいた方がいい」


「効力はシャルタル王国に限られるんじゃないの?」


「一番効力があるのはシャルタル王国だが、五大魔法使いの一人だからな。配慮があるんだ」


 国境門に到着した。こちらの門でも入国には入念に確認が行われているようでかなりの行列ができている。

 私たちは最後尾に並び、少しずつ前に進んでいく。20分くらい並んだところで順番がやってきた。入国書類に名前や冒険者証番号を記載して、入国カウンターに提出する。その際にマルセルに言われた通りロランスの紹介状を提出した。

 カウンター内の入国審査官のような人は、


「ウィザード・ロランスの紹介状ですか…。本物か確認させていただきます」


 と言って、透明なケースの中に紹介状を入れた。透明なケースは黄色に光った。


「本物と確認できました」


 入国審査官のような人は淡々書類にハンコを押していき、全て押し終えた後、


「書類も不備はありませんので、どうぞご入国ください」


 と門の奥の出口を手のひらで指した。

 マルセルもロランスの紹介状を貰っていたようでスムーズに通過してきた。


「もしロランス様の紹介状がなかったら、もっと時間掛かったの?」


「冒険者証が本物かどうか似たような透明なケースに入れて確認するんだが、本物だと確認取れた後に罰が付いてないかの確認に入る」


「罰??」


「犯罪歴がないか。犯罪歴は隣り合う国同士ではタイムラグがなく共有されているから、重い犯罪歴がある場合は弾かれる」


 マルセルの回答に疑問が浮かぶ。


「犯罪歴のある人を国外に出さなければいいだけじゃないの?出国するときに食い止めればいいじゃない」


「どういう経緯でそうなったのか真相は知らないけど、入国の時に確認作業があるからその一環として組み込んだんじゃないのかな。あと、無駄に橋を往復するという罰を受けさせたいんじゃないのかな」


「確かにこの橋の往復は罰かもしれない」


 そこに入国審査を通ってきた遥とヤニックが合流した。

 遥は合流するなりマルセルに、


「もしロランス様の紹介状がなかったら、もっと時間掛かったの?」


 と、私と全く同じことを聞いた。

 マルセルは私に対する回答と全く同じ回答をしたが、私と同じ質問を追加でされる前に犯罪歴があるのに国外へ出ようとした冒険者に対して無駄に橋を往復する罰を与えるという予想のくだりもまとめて話した。

 おかげで遥の反応は「そうなんだー」で終わった。

 そして私たちは国境門を出た。目の前には港町ハイリスの門が見える。ハッシュと同じように砦のような石壁に囲われた街並みだ。堤防を降りていき、ハリスの門の前に立つ。門番のチェックを受け門をくぐる。目の前に広がっていたのはデジャヴのような光景で、港町ハッシュとよく似ていた。そう思うと同時に、


「そっくりですね、ハッシュと」


 とヤニックも口にした。


「お互いに影響を受けてるんだ。ハイリスとハッシュは互いをライバル視してて、一方で流行っているとか優れているとされたものは瞬時に取り入れる。結果として似た町になってしまった形だ」


 マルセルの話を聞いて、とてもあり得そうな話と思うと同時に、とても残念な話だなと思った。


「ここでベンチャ王国の冒険者登録してしまうか?」


 とマルセルが提案してきた。


「ここにも冒険者ギルドあるの?」


「ある。小さいけど冒険者登録するだけなら問題ない。数は少ないだろうけど良い仕事があれば受けることもできるしな」


「試験は不要なんだよね?」


「そうだ。簡単なチェックで終わる」


 こうして私たちはハイリスの冒険者ギルドに向かうことになった。

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