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76.ハッシュの漁師たち

 イザークは私たちが座る場所を作ってくれ、私たちを目の前に座らせた後、さあ聞いてくれと言わんばかりに話し始めた。


「ワイたち、ここらへんのな」


 イザークは周辺にいる漁師を円を描きながら指して、


「こいつらと海に漁に出とったんよ。ほしたらよ、とんでもねー見たことねえくれえ巨大なリュキャーンがよ、ワイたちの船を襲ってきたんよ。正確には襲われたというより、逃げてきたリュキャーンに体当たりされた感じやったんよ。船は大きな穴開いてさ、海の中に引きずり込まれそうになってさ、そこにでっけえリュキャーンを追いかけてきた勇者と人魚やってきて、リュキャーン倒して、俺たちを船ごと空中に引き上げて陸まで運んでくれたんよ」


 冒険者ギルドでまとめてくれた情報はそれぞれが少しずつ違っていて情報伝達の過程で話が変わっていったのかと想像していたけれど、なんというか、冒険者ギルドで集めてくれた情報は破片で全部詰め込んだものが実際の話だったという感じだ。


「勇者がそん時はガキンチョでよ、そのガキンチョが船ごと海から持ち上げたんだよ。ワイはびっくりしてさ。そん時はそのガキンチョが勇者なんて知らへんから、なんやこのガキンチョは!と思ってよ。んで、そのガキンチョを支えてる女がよ、海を泳いでるように空を泳いでよ、なんかもう状況が良く分からんかったわ」


 横で呑んでた漁師仲間たちが話に加わってきた。


「おっ、勇者の話しとんのか?」


「この人らが勇者と人魚探しとんやって」


「ほお、なんで?」


 漁師仲間が私たちに訊いてきた。


「人魚の方が私の妹でして」


 漁師たちは一斉に驚いた。


「確かに似てる気ぃするわ。はっきりとは覚えてとらんのやけど、あんたみたいな雰囲気やったわ」


「こっちの嬢ちゃんにも似とる気ぃするなあ」


 漁師たちの反応に遥が答える。


「私は人魚の娘です」


「ほお!そら似とるわけやな」


「勇者と人魚の話をもっと聞かせていただけませんか?その時どんな様子だったかとか」


 漁師たちは私たちの正面に座り始めた。


「おいおい、おめえら、最初に声かけられたんワイやぞ」


 イザークが漁師たちをけん制するように言う。


「おめえは話盛るからよ、ちゃんと訂正役はおらんとあかんよ」


 目の前で繰り広げられるいざこざにマルセルが割って入った。


「では、まず、イザークさんからお願いします」


 イザークがふふんと勝ち誇ったように漁師たちに対して笑って、私たちに話し始めた。


「まず勇者な。あんときはほんと、ワイの腰の高さくらいの身長しかなかったんやないかな。船を引き上げられたときは気づかんかったけど、陸まで運んでもらった後に目の前に現れたのがガキンチョでよ。ワイの腰くらいくらいしか身長なかったんやないかな。小っちゃかったんや。そんなちっちゃい子に助けられたんかと思たら情けななってなあ。でも、あとから勇者と聞いて納得してな」


 先ほど聞いた話と全く同じというツッコミは置いておいて、エイタくんは重たいものを浮かせることができるような能力を持っていそうだ。


「で、その後や。人魚の方がよ『申し訳ありませんでした』言うて謝ってきてな。勇者の母さんみたいなよ。ワイらはなんで謝られてるんか分からんからよ、『何で謝るんや』言うて、助けられたのはこっちやいうて。ほしたらよ、ベンチャ側で勇者が特訓やーいうて、海の魔獣と戦ってたらしくてよ、勇者から逃げてきた巨大なリュキャーンがこっちに逃走してしまって、ワイらの船を巻き込んでしまったと平謝りしてきて」


「そうそう、で、『船を弁償します』言うてくれたんやな」


「そやねん、討伐した海の魔獣から出た魔石とか、巨大リュキャーンやらを全部譲ってくれて、ほいで、ワイらは良い船を新調できて漁獲量が格段に上がったんや。ちょっと打ち身はあったけど、誰も死なんかったし、結果として船も新しくできたしで、ありがたかったわ」


「で、『こんな強いのに訓練を怠らんなんて偉いなあ』言うて褒めたらよ、勇者が『僕もやりたくないんだけど、やらなきゃいけなくて』言うてよ。『子供に無理させるなんて可哀そうや』と人魚に言うたらよ、『私もそう思うんですけど、この世界で生きていくにはやるしかなくて』って言うて」


「そやねん、『誰かにやらされとんか?』って聞いたら、『私たちは魔王国との戦いに備えて呼ばれたので、それに見合うだけの力を身につけなければならないんです』言うてな」


「そうそう、で、『嫌や言うたらええやないか』って言うたんやけど、『そうもいかない』言うてな。『どうしてや』て聞いたんやけど、それには答えてくれんくてな」


「何かに縛られてるみたいな、事情がありそうな感じやったな」

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