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73.情報の中身①

 夕食の後、私たちはマルセルの部屋でメモの束を確認することにした。メモは地域ごとに分かれていたので、だいたい4等分になるように分けて、そこから回し読みをするようにした。

 内容はアルノルドが言っていた通り比較的古い目撃談や、背びれ尾ひれのついた又聞き話がほとんどだった。

 例えば今日だけで増えただろうハッシュの話もそれぞれ違っていた。

 私たちがベリンズ村のオッサンから聞いた話は、ハッシュの漁師イザークさんがベンチャ王国のどこかで何かに襲われた時に偶然通りかかった勇者の一行に助けてもらったという話だった。

 最初に冒険者ギルドが得た情報では、ハッシュの漁師たちが漁猟に出た際に巨大なリュキャーンに襲われ、船に大きな穴が開き船諸共海の中に引きずり込まれそうな状況に陥ったところ、空を飛んできた女と子供がリュキャーンを撃退し、漁師たちを船ごとを救ったらしいという話だった。

 しかし、新たに増えたハッシュの話では、ハッシュの漁師たちが勇者一行とリュキャーンの戦いに巻き込まれたらしい、5~6年くらい前にハッシュの漁師たちがベンチャ王国から戻る途中でリュキャーンに襲われて偶々通りかかった勇者と人魚に助けられたらしい、ハッシュの漁師が人魚に連れられて空を飛んで帰ってきたらしい、ハッシュのイザークが勇者が子供の頃に会ったと自慢している、といったものだ。

 この中で共通しているのは、

 ・ハッシュの漁師(イザーク含む?)

 ・リュキャーン

 である。ベンチャ王国があったり無かったりする。漁師が何人なのか分からないけれど、少なくともイザークさんという人を探し出せば当時のことを聞き出せそうだということは確信できた。


「リュキャーンって何?」


 私はマルセルとヤニックに訊いてみた。


「リュキャーンは海にいる黒い大きな生物だな。大きな口にするどい歯が何本もあって、背中に三角形のヒレが付いてる」


 マルセルの説明を聞いて、遥が私に「サメっぽいね」と言ってきた。

 私もそう思ったけれど、サメに似た生物なんだろうと想定することにした。


「この話も面白いよ」


 と遥が読み終わったメモの束を渡してきた。

 私は読み終わった束をマルセルに回し、マルセルはヤニックに回し、ヤニックは遥に回した。

 遥が読んでいたのは主にベンチャ王国での情報になっている。この中には目撃談も3件入っていて、遥が面白いと言ったのは目撃談の3件目だった。私はその前にあるメモをペラペラとめくりながら読んでいく。

 ベンチャ王国での情報の大部分は5年ほど前で統一されている。ハッシュの漁師が助けられたのも5~6年前で勇者が子供の頃だというから、それ以降はベンチャ王国付近にはいない可能性が高いように思う。

 情報の多くは首都ベンチャ付近の話になっている。人魚が首都ベンチャで店を開いて変わった道具を売っていたという目撃情報(おそらく宿屋ノボリングの主人が人魚から腕時計を買い取った話も同じ類だと思われる)や人魚が勇者を連れて首都ベンチャの空を泳いでいたという目撃情報、サンバチスト様が召喚した勇者と人魚が首都ベンチャの宮殿の北側で暮らしているらしい、勇者がSランク魔術師の元で修行していたらしい、勇者が首都ベンチャ近くの森で魔物を倒す特訓をしていたらしいという又聞き話。しかし、多くはあまり参考にならないような又聞き話だった。

 一方、怪我をして引退していたタンクが勇者の仲間として冒険者に戻った、ウィザード・クレマンスの一番弟子が仲間になった、ハーフエルフのSランク魔術師が勇者パーティに入ったという勇者パーティに繋がりそうな情報もあった。

 それ以外にあったのは、勇者と人魚が海の生物と戦う特訓をしていたらしいという又聞き話。これはハッシュの話と繋がりそうだ。

 そして遥が面白いと言っていたのが地下道での目撃談だ。

 ベンチャ王国は地下道が張り巡らされているらしい。その地下道は敵の襲来から王族が逃げるためのものではなく、庶民が闇取引をするために勝手に造ったもので、公共工事ではなく計画性の無い掘られ方をしたため時折崩れて人が生き埋めになったり、地上が陥没したりで問題となっていた。そのため、王族は地下道を埋めて対応したが、庶民が新たに掘るといういたちごっこの状態となっているらしい。その地下道に5年ほど前ダンジョンが現れ、そのダンジョンの魔物が地下道に出てきてベンチャの人々が襲われる事件が発生した。目撃者はその襲われた人々の一人だったらしい。そこに勇者一行が現れて魔物を一掃。その時に勇者は覚醒してとんでもない攻撃をした結果、首都ベンチャから離れた森の中に穴を開けた。今、その穴は『勇者の風穴』として観光名所になっているという話だ。


「ねえ、夏ちゃん。エンガ王国経由でマチュヤ王国行くのは避けられないかもしれない」


 そう言って、遥が私にメモの束を渡してきた。

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