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68.夜のドライブ

 魔鉱石を採掘して空間収納に入れた後、私たちは真っすぐ洞窟の入口まで戻った。


「おかえりなさい。アスルスネイクは大丈夫でしたか?魔鉱石はありましたか?」


 出迎えたヤニックが心配そうに聞いてくる。

 マルセルは「バッチリだ」と答える。


「マルセルが一部だけ切り出すっていうから、こんくらいかと思ったら、こんくらい切り出してビックリした」


 と遥がジェスチャーでヤニックに伝える。

 分かりやすく言うと、バスケットボールぐらいのサイズだと思っていたら、大きめのバランスボールくらいのサイズを切り出したという感じだ。

 マルセルは言う。


「実際にどれくらい使うか分からないし、金に困ったら売ることもできる」


 確かにその通りなので、特に突っ込むことはしなかった。

 私が洞窟の光を消した後、マルセルは洞窟の入り口の岩に何かを掘った。


「それは何?」


「いつかまた来るかもしれない時のための目印だ」


 その後、私たちはヤニックが作った三角柱を目印に、車を出せる道まで戻った。

 私は回復魔法で全員の疲労を回復させ、空間収納から車を取り出した。

 太陽は落ちかけている。


「まもなく日が落ちる。どうする?このまま首都シャルタルまで戻るか?それともベリンズ村でもう一泊するか?」


 マルセルが訊いてきた。

 この世界の道には殆ど街灯が無い。だから確かに夜道は少々怖い。しかし、


「夏ちゃんが運転大丈夫なら首都シャルタルに戻ろう。ベリンズ村は夕食がちょっと…」


 と遥が言った。

 遥が言わんとしていることは分かる。二日連続ニンニクたっぷりのジビエ料理はキツい。だから私は遥の主張を受け入れた。

 こうして私たちは首都シャルタルに向けて出発した。徐々に日が落ちていく。やはり街灯が無い道は暗さを感じるのも早い。私は車のライトを付けた。


「めちゃくちゃ先が見えるな!」


 マルセルが驚いている。


「これ、何も知らない人が見たら外から見たらビックリするでしょうね。凄いスピードで光が走ってると思いそうです」


 ヤニックが心配そうに言う。


「魔王軍が来たという噂が広がらなきゃいいな」


 と私が言うと、マルセルは断言するように言う。


「冒険者ギルドで魔王軍の類ではないと広めてもらうよう頼んであるから、徐々に誤解が解けていくはずだ」


 それに対して、バックミラー越しのヤニックが苦笑いで首を傾げている。最初にヤニックが言った通り、地方の小さな村に届く情報は少なく、誤解はなかなか解けないのだろうと察した。

 日はすっかり落ち、一方で街灯がぽつりぽつりと増えてきた。都会に近づいている。そんな感覚が出てくる。そして外の明るさこそ違うけれど、見慣れた景色になってきた気がする。違うのは人が少ないという点だ。昼間は往来する人が多かったけれど、今はあまり見当たらない。


「首都シャルタルの外は、夜の人通りが少ないんだね」


 遥が窓の外を見ながら言う。


「そりゃそうだろう。こんな真っ暗な中を好んで移動する冒険者や行商人はそうはいない」


 とマルセルは答え、


「この調子なら首都シャルタルギリギリまで車で移動でも大丈夫だな。門番の前に止めても良いかもしれない」


 と私に言った。

 私は「了解」と答え、車に乗り込んでいた場所を越えて首都シャルタルの門まで車で向かった。この車に気づいた門番が慌てて槍を構えたが、中に乗り込む私たちに気づいて槍を下げた。

 私たちが車から降りると、門番の一人が丸くした目で車を見て訊ねてきた。


「これは、もしかして冒険者ギルドで話題になっているジドウシャという乗り物ですか?」


「ええ、そうです」


「これが…」


 門番たちが興味深そうに車を覗いている。


「あの、しまっても良いですか?」


 私は門番たちに確認する。


「はい、どうぞ」


 門番の返事をいただいたので、私は空間収納に車をしまったのだけれど、その空間収納に対しても門番たちは目を丸くしていた。


「すげーだろ、空間収納。どんなに大きいものでも入るんだよ」


 マルセルはまるで自分の自慢話のように門番たちに告げる。


「さすがウィザード・ロランスのお客人です」


 感心する門番たちに対して妙な心地悪さを感じながら、私たちは首都シャルタルの中に入っていった。


「まずは冒険者ギルドに書類を届けに行こう。アルノルドあたりはまだいるはずだ」


 マルセルに従い、私たちは真っすぐ冒険者ギルドを目指した。

 冒険者ギルドは日が落ちたら閉まるということだったけれど、裏口にはまだ光があった。ベルを鳴らすと、中からアルノルドが顔を出した。


「おや、ご一行。無事鉄鉱石は手に入れましたか?」


 遥が「はい、これくらい」と例のバランスボールぐらいという表現をした。

 アルノルドは眉毛を上げ、両手を握る様にパンッと合わせ、「それはすごい」と口にしてから、


「どうぞ、お入りください」


 と私たちを中へ通してくれた。


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