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66.占い板

 午前中に初ダンジョン周回をして、小さいけれど魔石がかなり貯まった。


「車を魔道具化した魔石が100だとしたら、この魔石量でどれくらいの価値があるの?」


 私はマルセルに訊ねた。

 マルセルは少し考えてから「1かな」と答えた。


「それだけ?」


「例えば、この小さい魔石10個が、10個分くらいの魔石1個と同等の効力があるかというと無い」


「そうなの?」


「魔石は大きければ大きいほど大きな魔力を持っている。小さい魔石をたくさん集めたからと言って魔力が足されるわけではない。ただ、小さな魔石がたくさんあるというだけだ」


「そうなんだ」


「だが、使えないというわけではない。夏子が作ってくれた光るブローチのような小さなものだったら、こういう小さな魔石の方が向いている」


「確かに」


 マルセルは私たちに訊いた。


「どうする?魔鉱石を探しに行くか?」


 私とヤニックが反応するよりも早く遥が「行く!」と答えた。


「行ったところで見つかるとは限らないぞ」


 マルセルの確認に対し、遥は自信満々に、


「私が見つけてみせる。それに、さっきの占い板も使ってみたい」


「当たらなくても文句言うなよ」


 遥は真面目な顔で大きく頷いた。


「夏子とヤニックもいいか?」


 ヤニックは頷いて「僕は構いません」と答えた。

 私は少しでも早く金の卵を温めたいという気持ちがあったり、ダンジョン周回で今日のイベントは終わった気分になっていたけれど、遥が行きたいと言うならば、


「私も構わない」


 と答えてしまった。

 そして私たちは魔鉱石がある洞窟探しに向かうことになった。

 ベリンズ村を出て、少ししたところから車に乗り込む。助手席に座るマルセルは膝に占い板を乗せている。遥の提案で道に迷ったときは占い板に頼って進むことになったのだ。

 とはいえ、基本的には研究所からズレた中腹の方に進むイメージだ。しばらく進むと全員が「あ」という声を発した。目に前に二股に分かれた道が現れた。


「出番だね!」


 後部座席から遥が嬉しそうにマルセルを覗き込んだ。


「一応、どちらも中腹の方には向かうと思うが、右は多分すぐに道が途切れる。左はもうちょっと先に進む」


 マルセルはそう言ってから、遥を見て念を押すように告げた。


「当たらなくても絶対に文句言うなよ」


 遥は真面目な顔で答える。


「絶対に言わない」


 マルセルは占い板に両手をかざし、


「魔鉱石のある洞窟を見つけるためには、どちらの道を選択するべきか」


 と口にした。

 全員が占い板の動きに注目した。

 ただの板にしか見えなかった占い板に記号のようなものが浮かび上がった。

 後部座席から「すごっ」というヤニックの声が聞こえた。

 矢印だ。矢印は右を指している。


「右だね!」


 遥が確認するように言った。


「占い板はそう言っている」


 というマルセルの言葉を受けて、私は車を右折させた。

 しばらくして、マルセルの言っていた通り道の切れ目に到達した。


「ここからは歩きか」


 私はそう言って車を停めた。

 この先にあるのは獣道と樹海だった。

 遥は目を細めて奥を覗いている。


「木が視界の邪魔をして奥の方が見えない。ギガンモーレイの巣みたい。でも、少なくとも右側はないと思う。こっちだけは向こうに何もないことが見えてる」


「つまり、これの出番ってことだな?」


 とマルセルは占い板を見せてきた。

 遥は大きく頷く。

 マルセルは占い板を地面に置いて両手をかざした。


「魔鉱石のある洞窟を見つけるためには、どの方向に向かうべきか」


 占い板に再び矢印が浮かび上がる。占い板はマルセルが板を向けた真っすぐの方向を指している。


「そっちなんだ」


 遥が反応して、目を細める。


「確かに、この方向が一番見えにくいんだ。木が重なりすぎてる」


「この方向に向かうと遭難しそうだね。目印残していかなきゃ」


 私が空間収納の中からルーズリーフを取り出そうとしたら、ヤニックはしゃがんで地面に両手を置き、地面に30センチくらいの三角柱のようなものを出した。


「これで良ければ、一定の間隔で作っていきます」


 私は「天才!」と親指を立ててヤニックに出した。

 ヤニックは子供っぽく笑った。

 そして、私たちは戦闘モードで樹海に進み出した。ヤニックは2メートルくらいの間隔で三角柱を作っている。全体的にジメジメして、木や地面にはキノコが多く生えている。コケも多いため少し滑りやすい。蛇や虫は出てこないけれど、動物は生息しているようで時折ガサガサという音が聞こえてくる。そのたびにマルセルが「静かに」という合図をする。どうやら動物側も人間を怖がっているようで、こちらの気配を消せば、向こうも襲ってこないということだった。


「見える」


 目を細めて奥を見ていた遥が言った。


「何が見える?」


 マルセルが反応する。


「たぶん洞窟。占って」


 遥の言葉にマルセルが驚く。


「今?何で?その洞窟に進めばいいだろう」


「その洞窟に魔鉱石があるかどうか。なければ違う洞窟探すから。あと、安全かも占って」


 マルセルは遥に押される形で占い板を取り出して、手をかざした。


「この先にある洞窟に魔鉱石は存在しているか、致死性のガスは発生していないか」


 占い板には文字が浮かび上がった。


『魔鉱石、存在している。ガス、発生していない』

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