65.ダンジョン周回
2周目は1周目よりも早く回り切った。
あっという間にボスまで到達し、今回も私の光魔法で一発討伐。宝箱が再び出現した。
今度のアイテムはヤニックが貰うことになった。ヤニックが箱を開ける。
「これは?」
ヤニックは中から不思議そうに一枚の紙切れを取り出した。
「それは不死の護符だ。ボスがアンデッドだったからかもな」
マルセルが解説してくれた。
「不死の護符?」
「一度だけなら死にそうな状況に陥っても死なないってアイテムだ」
「死なない?」
「そうだ。めちゃめちゃレアアイテムだぞ」
「死なないだけで怪我はするってことですか?めちゃめちゃ痛いとか」
「それはある。でもそれは夏子の回復魔法でどうにでもなる。使わない日が来ることを祈りながらお守りとして持っておけばいい」
ヤニックは大きく頷いて「分かりました」と自分の胸ポケットの中にしまった。
私たちは再び魔法陣で外に出た。3人はすぐさまダンジョンの中に入ろうとしたけれど、
「ちょっと待って、一回水飲ませて」
先へ先へ進もうとする3人を止めて、私は今朝宿屋で入れてもらった水を飲んだ。私たちが泊まったベリンズ村の宿屋は、朝食付を選んだ客には首都シャルタルの朝食屋さんと同じように水を提供してくれるということだった。だからマルセルは朝食付を選んだらしい。
3周目ともなると、少し疲労感が出てくる。こういうところで他の3人との年齢差を感じてしまう。
「疲れてるなら、回復魔法を使えばいいのに」
マルセルが言う。
「回復魔法って怪我治すだけではなくて疲労回復もできるの?」
マルセルは当然という風に頷いて、
「回復魔法とはそういうものだ」
と言った。
私はヤニックの肌を直したときと同じ要領で足や腕など疲れている部分に回復魔法をかけた。すると、みるみるうちに疲れが消えていくことを実感した。
「すごい。回復魔法めちゃくちゃ便利!」
私が感動して言うと、マルセルはマジックバッグの中から魔法書を取り出して言った。
「首都シャルタルに戻ったら、魔法書買ったらいいよ。きっともっと便利だと感じる魔法がたくさん載ってるから」
私は大きく頷いて「絶対買う」と答えた。
その後、3人の疲れている部分を回復させて、私たちは再びダンジョンに入っていた。
3周目ともなると、それぞれが襲い掛かる魔物に対する戦い方を掴んできていて、あっけなくボス部屋に辿り着いた。今回も私がボスを討伐した。
宝箱を開けるのは私だ。
「え?」
宝箱を開けて瞬間、私は分かりやすく目が点になっていたと思う。そこにあったのは楕円形の金色の玉だった。両手で包めるくらいのサイズである。
「金の卵じゃないか!マジか?!」
私が取り出したものを見るなり、マルセルが驚愕といった風に近寄ってきた。
言われて見ると楕円ではなく卵型である。
「金の卵って何ができるアイテムなの?」
マルセルは首を横に振った。
「アイテムじゃない。そのまま卵だ」
「そのまま卵って?」
「だから、何かの卵だ。何が生まれてくるか分からない」
私はマルセルの言っている意味がすんなり入ってこず、思わず「は?」と聞き返した。いや、正確には言っていることは分かる。おそらく温めて孵化させるのだろう。分かるけれども、それが何を意味しているのかが分からなかった。
「金の卵は超レアなものだ。こんなレベルの低いダンジョンで出るような代物じゃない。何故これがドロップしたのか分からないくらいの超レア」
マルセルは「光魔法でアンデッドボスを倒し続けると出るのか?」とかブツブツ言っている。
「そんなに凄いの?」
私が問うと、
「その卵から何が生まれるかは本当に分からない。ただ、それを孵した者は生まれてくるものを使役できる」
マルセルが答える。
遥はピンときたのか、
「使い魔になるってこと?」
マルセルは指を鳴らして遥を指して「そうだ」と言ってから、私に告げた。
「卵が孵るまでどれくらいかかるか分からないが、寝ている間とか食事の間とかを使って大事に魔力を込めながら温めることだな」
私はマルセルの言いつけ通り、さっそく卵をギュッと抱きしめてみたけれど、
「次のダンジョンの間、卵はどうしておけばいいの?」
私はマルセルに訊いた。
マルセルは「う~ん」と答えに悩んでいる。
「俺も実際に見たのは初めてだからなあ」
「空間収納に入れても大丈夫なもの?」
「う~ん。保障はできないが、空間収納に入れている間は時間が止まっているわけだから、温められる時間は温めておいて、それ以外は空間収納に入れてけば、卵からしたらずっと温めてもらっている状況だと錯覚するかもしれない」
私は卵を空間収納にしまった。
そして再び私たちは魔法陣で外に出て、回復魔法で疲労回復させた後、再びダンジョンへ。
4周目。3周目以上にそれぞれが襲い掛かる魔物に対する戦い方を掴んできていて、前にいた冒険者たちを次々に追い抜かし、ボス部屋に辿り着いた。今回も私がボスを討伐した。
宝箱を開けるのはマルセルだ。
「久しぶりだな」
マルセルは嬉しそうに宝箱を開けた。そして、しばし沈黙した。
「どうしたの?」
遥が訊くと、マルセルは宝箱から取り出してこちらに見せてきたのは一枚の板のようなものだった。
ヤニックも見たことが無い代物のようで「それは何ですか?」と訊ねる。
マルセルはその板の裏を見たり、逆さにしたりして、何やら確認している。
「占い板だ」
「占い?」
「レアアイテムではある。ただ…」
「ただ、何?」
「無くてもいいかなってものだ」
マルセルのテンションの低い回答に、遥が不思議そうに訊ねる。
「何で?占いアイテムだったら何か役立つんじゃないの?道に迷ったときにとか、どちらに行けばいいかとか占えばいいんでしょ?」
マルセルは真顔で「当たるならな」と遥を見た。
「当たらないの?」
「占いは当たるも八卦当たらぬも八卦だ。占いアイテムだからと言って必ず当たるとは限らない。過信はできないアイテムだ。使うとしたら、人生に迷った時の後押しとして占ってみる、それくらいじゃないか」
ああ、なるほど、それは無くても良いものだなと納得をした。
こうして、私たちの初ダンジョンは終了した。




