64.初ダンジョン
翌朝、私たちは魔鉱石を探しに向かう予定だったけれど、
「ダンジョンに行ってみたい!」
という遥たっての希望でダンジョンに向かうことになった。
私は魔鉱石が欲しかったけれど、既に少しは持っていることや、
「初めてのダンジョンという意味では、ここは良い練習場所にはなると思う」
というマルセルの判断もあったことで決定した。
「ダンジョンって、ボスキャラ倒すとレアアイテムドロップするんでしょ?」
遥がマルセルに訊ねる。
「運が良ければな」
マルセルは冷静に返す。
「僕、一度ダンジョンを経験してみたかったんです」
ヤニックが少しテンションを上げている。
ダンジョンはベリンズ村から徒歩20分ほど森を進んだ先の山肌に存在していた。既に冒険者が何組か入っているようだけれど、
「問題ない。前の冒険者が魔物を倒しても、その冒険者たちが先に進めばそのエリアに新たに魔物が出現するシステムになっている」
ということだった。
「前の冒険者が倒せなかった場合は?」
「追い抜く。あるいは共闘」
「途中で諦める場合は?」
「強い魔物が出現するエリアにはダンジョンの外に退出する用の魔法陣が設置されている。それを使って外に出る」
「なるほど」
私たちは、昨晩宿屋で私が作った魔道具・ブローチ型ライトを胸元に光らせて中に入っていく。ブローチは無事光ってくれている。当然手には魔法の杖を握る。
最初のエリアでは大量のスライムが四方八方から襲い掛かってくる。突然のことでビックリこそしたものの、所詮スライムであり、私たちは瞬殺でエリアを抜けた。
その後も少し大きめのスライム、トカゲのような魔物、サソリのような魔物、クモのような魔物、コウモリのような魔物のエリアが続いていくが、総じてそこまで強くないため、コントロールが悪めの遥でさえ討伐でき、ドロップする小さな魔石が順調に貯まっていった。
「なんか、地味にレベルが上がってる!」
遥は自分のステータスを確認している。
私も親指と人差し指で画面を出して確認した。最初に見た時よりも攻撃力も防御力も50くらい上がっている。
「ダンジョンは基本レベル上げのための場所だからな。昨日も大ネズミを山ほど倒しているから、その影響も出ていると思う」
とマルセルが答える。
私たちは更に奥へ奥へと進む。昨日散々討伐した大ネズミのエリアも出てきた。前にいた冒険者は梃子摺って魔法陣で退出したようだけれど、私たちは余裕で討伐。
「比較的簡単に倒せる魔物ばかりなのに退場する人もいるんだね」
遥がマルセルに言うと、マルセルは苦笑して、
「ヤニックはD、遥はC、夏子はBからスタートしてるから感覚麻痺してるのかもしれないが、前も言っただろう。そこらの冒険者はG級から始まるんだよ。ここは素人上がり、魔力を持ってない、魔力があっても弱いといったGやF、Eあたりの冒険者向けだ。彼らにとってはここは十分に難しいダンジョンだ」
「そういうもんなんだ」
「シャルタル王国にあるダンジョンは大部分がこのレベルだ。だから、比較的レベル低めの冒険者が多くやってくる。もし勇者一行が北をベースにしているなら、レベル低めの北出身の冒険者がどれだけ来ているかで冒険者ギルドに集まる情報量も変わってくると思う」
「そっか、そこにもかかるのか」
「ま、このパーティならボスまですぐ到達するから、何周かするか?」
私は思わず口を挟んだ。
「何周かするって?ボスを倒したら、また入るってこと?」
マルセルは当然という顔で頷く。
「なんで?」
「レベル上げとレアアイテム狙い。午前中で4周くらいはできるだろう」
簡単に倒せるとはいえ40過ぎのお姉さんには体力的にきついと口から出そうになったけれど、
「いいね!」
と遥が賛同した。
「ヤニックも積極的に討伐しろよ。ヤニックが一番レベル上げるべきだからな」
マルセルがヤニックに通達するように言うと、マルセルは深く頷いて、
「分かりました!頑張ります!」
こうして私たちは順調にエリアを進んでいき、ボス部屋まで辿り着いた。ボスはマントを羽織った大きな骸骨だった。
マルセル曰く、アンデッド系は倒すのが大変という話だったけれど、私の光魔法で一発で討伐できた。
骸骨が消えて宝箱のようなものが現れると、
「光魔法って便利だな」
マルセルは呆れたような口調で呟いた。
「4周するなら、一人一回ずつ箱を開けるルールどう?」
遥がニコニコ提案した。
「何が出ても一切クレーム無し。箱を開けた人の物にするルール、どう?」
私とヤニックは一度顔を見合わせてからマルセルを見た。それが良いルールなのかどうか分からないからだ。
「みんながそれで良いなら、俺は構わない。本当にクレーム無しでいいんだな?」
遥が「おうよ!」と軽快に答え、「じゃあ、最初に誰が開ける?」と私たちを見る。
「遥が開けたいんでしょ。だったら、遥が開ければ?」
私が言うと、マルセルとヤニックも賛同してくれた。
遥はニヤニヤと嬉しそうに笑いながら「では行っちゃうよ!」と宝箱を開けた。中に入ったものを取り出す。
「なんだ、これ? これがレアアイテム?」
遥が不可解そうにドロップアイテムを見ている。鳥の羽のように見える。
「それはエアプリウムというレアアイテムだ」
「エアプリウム?何ができるものなの?」
「自分を軽くすることができる」
「空を飛べるってこと?」
「空は飛べないけど、イメージは高い所から飛び降りても怪我をしないって感じかな?思い描いた場所には多分着地できないけど、ゆったり落ちていく。それこそ鳥の羽のようにふわふわと落ちていくことができるというアイテムだ。遥の風魔法とは相性が良いと思うから、上手くコントロールすれば思い描いた場所に着地できるようになるかもしれない」
遥は「へえ」と不思議そうにエアプリウムを眺めた。
こうして、一つ目のレアアイテムを手に入れた私たちは魔法陣を通って外に出て、休む間もなく再びダンジョンに突入した。




