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59.麓の洞窟さがし

 私たちは魔法陣を通って、元の森に戻った。


「まずは、ここがサラエド研究所からどれくらい離れた場所にあるのか、そこを確認する必要がある」


 マルセルは言った。

 遥は頭に「?」を浮かべながら「何で?」と訊く。


「サラエド研究所はおそらく山の中腹あたりにあった。そのあたりの洞窟で魔鉱石が採れるということを意味していると思う」


 今度はヤニックは「?」を頭に浮かべたようで、


「どうして中腹と分かるんですか?」


 と訊いた。

 マルセルは「そっか…」と呟いてから、


「ヤニックはあの村から出たことなかったんだもんな。研究所に着いた瞬間寒かっただろう。山は上に行けば行くほど寒くなる。つまり研究所はここより高い所にあったということだ」


 ヤニックは「そうなんですね」と小さく何度か頷いた。

 マルセルは辺りを見渡して、


「見た感じ、ここは山の麓だ。だから探せば洞窟はきっとある。ただ、そこに魔鉱石がある可能性は高くはないと思う。ここで採れるなら、研究所はこの付近に建ててるはずだ」


 遥は「なるほど」と納得している。

 私はマルセルに訊く。


「中腹に向かう道はあるの?」


 マルセルは右のこめかみの辺りに右手の中指を置いた。


「無くは無い。但し、現実的ではない」


「どういうこと?」


 マルセルは右手の人差し指を出した状態で前に出した。


「まず、車では行けない」


 その時点で絶望的なことは理解できた。

 マルセルは次に中指を立ててピースの形にした。


「次に、足場が悪い」


 遥もヤニックも表情が曇ってきている。

 マルセルは次に薬指を立てた。


「そして、我々は今、軽装である」


 遥は「?」を浮かべながら訊く。


「軽装だと何でダメなの?」


「中腹は今、さっきの寒さだぞ。これから登ったらもっと時間は遅くなる。日が暮れれば暮れるほどもっと寒くなる。暗くなってからの下山は危険だ。つまりそこで野宿する必要が出てくる。その服で野宿はきついだろう?」


「うーん、理由は分かったけど、ここまで来たのに何もしないで帰るの?それは勿体なくない?」


 マルセルは頷いた。


「勿体ないと俺も思うよ。そこで最初の話に戻る」


「研究所からどれくらい離れた場所にあるかってこと?」


「そう。苦労して登った山の中腹がサラエド研究所の付近だったら、ただの徒労だ」


「確かに」


「遥の遠視はどこまで見えるんだ?ここから少し離れて山の中腹が見える場所であれば、研究所の場所が見えたりしないか?見えさえすれば、そこを外して中腹を目指せばいい」


 遥は「うーん」と悩む。


「遠くから山の様子を見るなんてことはやったことないから、どれくらいできるのか見当つかないな。でもそれって今日は何もできないってことでしょ?」


「そうなる」


「だったらさ、今日ここら辺散策しようよ。で、散策しても何もなければ、中腹が見えるところまで行って研究所の場所を確認するってのはどう?」


 マルセルは私とヤニックを見る。


「僕は遥に賛成です。せっかく来たんですし」


 とヤニックは言う。

 私は腕時計を見た。今は昼の1時過ぎだ。そして遥とマルセルを見て言った。


「お昼挟んで二時間くらい散策、無さそうなら中腹確認して帰る。そして山装備をして別日に中腹に行くというのは?」


 遥は手を上げて「賛成!」と言う。

 こうして私たちは昨晩食堂での夕食時に譲ってもらっておいたパンと今朝の買い物のついでに買ったフルーツで昼食をとってから、この森の近辺で洞窟探しをすることになった。

 まずは遥が山側を遠視して洞窟がありそうな場所を探す。


「うーーーーん、森しか見えない。洞窟がありそうなヒントはないの?」


 遥が目を細めて遠くを見ながら訊いてくる。

 マルセルは何かを思い出すように考えている。


「この辺りはまだ麓だ。ならば…」


「ならば?」


「いわゆる山壁の洞窟を探すのではなく、地面に空いている穴を探すという方がいいかもしれない」


 遥は目を細めるのを止めて、マルセルを見る。


「地面に空いている穴?」


「そうだ。地下に潜る穴のようなイメージだ」


 遥は再び目を細めて遠視して探し始めた。そして「んーーー?」という声を出した。


「どうしたの?」


 私が聞くと、遥は目をさらに細めた。


「あったかも。地面に空いている穴」


 マルセルは小さく「さすがだな」と呟いてから訊いた。


「そこまでの途中に生き物はいたか?」


 遥は遠視をやめてマルセルを見た。


「ううん、特に見えない。でも、リリスキジカも咲いてない。ってことは地中に魔物がいるかもってことだよね?」


「その可能性は否定しないが、シャルタル王国側では強い魔物は少ないから、襲われたとしても乗り切れるだろう。運良ければ魔石が落ちる可能性もある」


 遥は嬉しそうに笑う。

 私とヤニックは視線を合わせて頷いた。


「よし、行こう!」

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