56.次の仕事は?
私たちは情報提供代として銀貨50枚を冒険者ギルドに預けることになった。このうち冒険者ギルドの手数料が1割の銀貨5枚だという。
「例えば、もし3日後に集まった情報量が銀貨20枚分で、その中に十分な有益情報があって依頼を終了するという場合は銀貨20枚+手数料銀貨2枚、合計銀貨22枚分となりますので、差額銀貨28枚はご返却します」
と、アルノルドは説明してくれた。
私と遥で銀貨25枚ずつ出すことにした。私が50枚出すと最初に告げたのだけれど、遥が、
「日本円だったらお願いするところだけど、今は同じ金額しか持ってないのだからそこは折半でしょ」
と言ってきたので受け入れた。
私たちから預け金を受け取ったアルノルドは、
「3日間はどうされます?新しい仕事されますか?」
と訊いてきた。
確かに3日間、何かで時間を潰す必要がある。温泉地ルシュダールのような観光地が他にあるなら遊びに行ってみたい気持ちもある。
そんなことを考えていると、遥が答えた。
「魔鉱石か魔石を採りたいです。夏ちゃんに魔道具を作ってもらいたくて」
意外な答えにビックリして「何を作ってほしいの?」と思わず聞いてしまった。
遥は得意げな顔をして答えた。
「ドライヤー」
温泉地での失敗から魔道具でドライヤーを作った方が良いと考えたのだろう。しかし、
「でもさ、魔道具で作るほど頻繁に使うかな?普段は浄化魔法で綺麗にするだけで髪はルシュダールみたいなところに行かない限り洗わないでしょう」
と私は言った。
しかし遥は首を横に振って力説する。
「合った方が絶対便利。寝ぐせとかも直せるし」
「なるほど。作る作らないは置いておいて、何かしら作ることを考えても魔鉱石か魔石はいくつか持っておきたいね」
作るのはドライヤーではなくヘアアイロンでもいいのだ。
するとドニーズが言った。
「魔石の大きさにこだわりはありませんか?残念ながらシャルタル王国内には大きな魔石が獲得できるようなレベルの高いダンジョンはありませんので、D級レベルの魔物が出るダンジョンに行っていただくしかないのですが、そうなると親指の爪くらいの大きさの魔石が落ちるか落ちないかくらいです」
それはとても小さい。込められる魔力もわずかだろう。おそらくドライヤーやヘアアイロンは無理だと思い割れる。
「ただ、ちょうど良い、もしかしたら大きめの魔鉱石が採れるかもしれない場所での依頼はあります」
ドニーズは部屋を出て行き、一枚の紙を持って帰ってきた。
「こちらです」
と私に紙を渡した。
紙には依頼事項が書かれている。
「サエドロ研究所への食糧運搬および書類受け取り…」
私が紙を読むと、ドニーズが補足してくれた
「サエドロ研究所はキレネー山脈の麓にあります。報酬としては高くはないですが、サエドロ研究所は魔鉱石を使った様々な研究していて、なぜそこにあるかというと、魔鉱石が採れる洞窟が多く存在しているからなんです」
ドニーズの話にアルノルドが更なる補足を加える。
「サラエド研究所は王家直属の研究機関で、一部洞窟がサラエド研究所管轄となっておりますので、その洞窟は立ち入ることはできませんが、研究所管轄以外の洞窟であれば採取は可能なので魔鉱石を見つけることが出来れば自分のものとすることは可能ですし、運よく魔物に遭遇できれば魔石を得ることはできるかもしれません」
遥は「いいじゃん!」とテンションを上げる。
しかし、そこにマルセルが更なる補足を加える。
「ギルマスのニュアンスをちゃんと理解したか?全部が『かもしれない』だ。確定ではない。この仕事をしたからといって魔鉱石や魔石が手に入るとは限らない」
「いいよー。どうせ3日間はやることないし、何より楽しそう」
遥はノリノリだ。
マルセルやヤニックに訊く。
「ヤニックはどうする?内容的には大所帯で行く必要もないから、今回の報酬を使って首都シャルタルでのんびり過ごすのも良いし、個人で別の仕事をするのも良いと思うぞ」
マルセルの感覚的にはそういう程度の仕事なのだろう。
しかしヤニックの答えは、
「僕も行きます!洞窟の中であれば僕の魔法も役に立つかもしれないです」
マルセルは小さく頷いてから私を見た。そして、当然行くよなという顔をして、ドニーズに告げた。
「その依頼、このパーティで受けましょう」




