55.依頼の内容
私たちは温泉地ルシュダールを出て、車で真っすぐに首都シャルタルに戻った。
その道中、アルノルドは私のルーズリーフとボールペンで、既に私たちが持っている勇者と人魚の情報をまとめてくれた。
勇者の名前はエイタ・サトウ、人魚の名前はハルコ・ツチヤ
5年ほど前、宿屋ノボリングの主人が人魚から腕時計を買い取っている(宿屋メルキュールの主人)
5~6年前にカザサリムのダンジョン付近で噂を聞いたことがある(マルセル)
2年ほど前、エンガ王国内の冒険者ギルド付近で人魚が目撃されている(エンガ王国出身リンゼオ)
2年前、エンガ王国ヴェルタン村で勇者パーティが魔物を倒す。パーティは5名、他に後方支援の魔術師2人とタンクがいた。当時勇者パーティはエンガ王国のベスティムという街にいた(エンガ王国出身の温泉客の女性)
「これらの情報以外に報酬が出る形で良いですね?」
私は「はい」と答えてから、
「ちなみになんですけど、昨日の仕事の報酬はいくらになるんですかね?依頼をするにしても払える金額には限度があって。私たちは異世界人だから手持ちの現金がなくて」
「それは冒険者ギルドでお話ししましょう。今想定されている金額よりも上振れる可能性がありますので。でも、その報酬から十分に出せると思いますよ」
こうして私たちは首都シャルタル付近まで車で戻った後、車を降りて、徒歩で首都シャルタルに入った。
冒険者ギルドに戻ると、ドニーズが、
「お戻りになられたのですね、お呼びしてきます」
と冒険者ギルドの外に出て行った。
「どこに行ったの?」
遥がアルノルドに訊くと、アルノルドは、
「依頼主です。それまでは先日の部屋でお待ちください」
と私たちを奥の魔力の検査をした部屋に通してくれた。そこで空間収納からギガンモーレイの粘液が入った袋を出して、アルノルドに渡した。
しばらくして扉がトントンと鳴り、ドニーズが入ってきた。
「依頼主をお連れしましたので、よろしくお願いいたします」
アルノルドは頷いてから両手を握る様にパンッと合わせた。
「それでは交渉して参りますので、しばらくお待ちください」
とアルノルドが出て行った。
30分ほど待っただろうか。
「大変お待たせしました」
とアルノルドがドニーズを連れて戻ってきた。
アルノルドは両手を握るようにパンッと合わせてから、ニカっと笑って言った。
「報酬確定いたしました」
マルセルは疑り深い顔でアルノルドを見る。
「ごまかしてねえだろうな」
アルノルドは「どうぞ」と一枚の紙を私たちに見せた。
「こちらが受取証です。一人当たり金貨70枚で」
私と遥そしてヤニックは驚きのあまり「え?!」と声を出した。
「そんなにいただけるんですか?」
ヤニックが真剣な顔でアルノルドに訊く。
アルノルドは頷いて「ええ」と答える。
マルセルはアルノルドから受領証を受け取って裏と表を見ながら言った。
「それくらいの報酬の仕事だから、この男は隠し持って参加してきたんだよ」
それに対してアルノルドは冗談っぽいムスっとした顔をして、
「これでも金貨100枚、一人当たり金貨20枚分上乗せ交渉してきたんですよ。もっと感謝してくださいよ」
マルセルはアルノルドの手を握って、
「感謝してるよ、ギルマス!」
と、わざとらしく言った。
アルノルドは苦笑いをする。
私、遥、ヤニックは「ありがとうございます!」と本気の感謝を述べた。
その後、ドニーズがそれぞれに報酬を渡してくれた。私たちは受領証にサインをし、金貨を受け取った。
アルノルドは「さて」と両手を握るようにパンッと合わせた。
「勇者と人魚の情報依頼に関して、ドニーズさんにまとめてもらうのでご確認いただけますか?」
私たちは「はい」と一斉にドニーズを見た。
ドニーズはアルノルドから手渡されたであろうルーズリーフを見ながら口に出していく。
「勇者と人魚に関する情報収集。噂話は1件銅貨5枚、目撃談は銅貨50枚、直近2週間以内の目撃情報であれば銀貨1枚、現在の定住地情報であれば銀貨10枚」
何か追加されている。
「直近2週間以内の目撃情報であれば銀貨1枚?」
私の疑問に対してアルノルドが答えた。
「これはドニーズさんが『目撃談に関して時期の差は出さないのか』と確認してきて」
ドニーズが続ける。
「5~6年前の情報と2週間前の情報で同じ価値はないかと」
私は納得のあまり「確かに…」と反応した。
「金額設定に問題は無いですか?」
ただの目撃情報が銅貨50枚で、2週間以内の目撃情報が銀貨1枚ということは銅貨100枚分ということだ。倍の値段ということだけれど、情報の価値からすると、
「妥当だと思います」
私は答えた。
ドニーズは私の反応を確認してから頷いて、内容確認を続ける。
「報酬が発生しない条件としては、既に獲得済みの情報であること。現在獲得としては、勇者と人魚の名前、宿屋ノボリングの腕時計、カザサリム近辺の噂話、2年ほど前のエンガ王国内冒険者ギルドの人魚目撃談、2年前のエンガ王国ヴェルタン村目撃談。勇者が5人パーティであること。2年前の勇者パーティはエンガ王国のベスティムという街にいたという情報」
私は「はい、相違ありません」と答える。
ドニーズは私の反応を確認してから頷いて、
「また、重複する情報が入った場合は先行情報のみ報酬が発生するという形にさせていただきます」
これまた新しい条件であるけれど、妥当な条件なので、私は答える。
「はい、問題ないです」
ドニーズは私の反応を確認してから頷いて、
「収集期限はいかがいたしましょうか?ギルマスからはペンチャ王国に向かう予定だと伺っていますが…」
私と遥は顔を見合わせる。どれくらい情報がどういう風に集まるのかが浮かばないので、妥当な期間が頭に浮かばない。
「まず3日くらいはどうだ?」
マルセルが私たちに訊いてくる。
「3日の時点で情報の集まりがいまいちだったら1週間に延ばすとか」
私が答える前に遥が答えた。
「じゃあ、それで!」




